外国人社員を雇用する際には、入国管理局に対してビザ変更・在留資格認定証明書の申請など、何らかのビザ手続きを行うケースがほとんどです。これらの手続きを行う際は、外国人労働者である申請人自身や受入企業側の状況などを審査されるため、入国管理局から様々な資料の提示が求められることとなります。その資料の中に、在留期間中に安定した収入が確保されているかどうか(日本人と同等額以上の報酬があるかどうか)を確認するものとして労働条件通知書や雇用契約書の提示が求められます。
ここで問題となるのは、審査の際に提示した雇用契約書等の賃金額よりも、実際には下回る賃金額で雇用した場合の扱いです。まず、在留資格の観点からは直ちに在留資格が取り消しになるといったことは考えにくく、ビザ取得後に日本で安定的な収入を得ているか否かの確認審査は在留期間が満了する2ヶ月前から行えるビザ更新(在留期間更新許可申請)の際に行われます。その時には、原則として所得証明(通常は源泉徴収票)及び在職証明書を提示することとなりますので、初めのビザ手続きの際に提示した雇用契約書等の賃金額と著しく乖離している場合には、日本にて安定した収入を得る活動を行っていないと判断され、その在留期間更新許可申請が認められないといったことが発生します。
またそれ以前に、労働条件通知書や雇用契約書にて当該外国人労働者へ提示した賃金額よりも下回る賃金しか支払っていないと、契約上での不法行為となり未払い賃金として労働基準監督署等へ通報され、臨検の対象となる可能性もあります。その際には賃金の支払い状況を賃金台帳や給与支払明細書等で調査され、当初に通知及び契約した賃金額とそれを下回る賃金額との差額分が未払い賃金として支払命令を受けることとなります。さらに、それ以外の労働時間の実態調査において時間外等が発生し未払い賃金となっている場合には、もちろん支払いの対象となるので注意が必要です。