1.哲学的な考え方の相違
給与には人間基準の労働力対価である“能力主義”と、仕事(職務)基準の労働対価である“成果主義”とに大別できます。日本と欧米で給与に対する捉え方が異なるのは、哲学的な考え方の相違にあります。
アジアには「人間の価値はみな同じ」というのが基本であり、どんな人でも差別なしに育成していくのに対し、欧米では仕事に人をつけ「仕事の価値はみな異なる」が基本となっています。
2.労働市場の相違
欧米、特にアメリカでは「仕事は変わらないが会社は変わっていく」という労働市場が基本であり、仕事の価値で給与を決定する“職務給”が成り立ちます。日本においては「会社は変わらないが仕事は企業内で変わる」という労働市場が基本をなしています。
転職がアメリカのように当たり前となっていない日本の労働市場においては、職務給を導入してしまうと異動のたびに給与が変更されてしまい、不利益変更などの問題が生じてしまいます。
3.能力主義か成果主義か
日本の能力主義か欧米の成果主義かを考えた場合、日本が哲学的な考え方を変更してまで成果主義に向かうのは、あまり得策とはいえません。また、労働市場の相違から考えてもデメリットがあります。
これまで日本では、成果主義の導入への動きがありましたが、必ずしも成功しているとはいえない状況にあります。やはり、能力主義を主体としていくことが適切だと考えます。
4.日本型成果主義の構築
日本の給与制度は能力主義の人間基準ですが、経済や人材のグローバル化などの新たな時代環境の変化の中で、能力主義だけでは対応できない状況になってきています。少なくとも中高年層については成果主義を導入していかざるを得ない状況です。
アメリカにおいては、職務給の仕事基準だけではなく人間基準を取り入れる動きも進んでいます。日本はこれまでの日本モデルを廃棄するのではなく、その長所を活かしながら欧米モデルの良さを取り入れていく姿勢が必要です。