日本の高度経済成長を支えてきた雇用社会の慣行は独自の文化があり、日本企業に勤める外国人にもその文化を理解させることが必要です。理解があれば日本企業に勤める外国人が抱く「昇進が遅い」「労働時間が長い」「リーダーシップに欠ける」などのストレスが解消されることが期待できます。
日本人社員は高度人材である外国人社員を、外国人社員は日本雇用社会をお互いに理解してリスペクトすることが重要です。
日本は第2次世界大戦の敗戦後、日本国憲法の“生存権”や“国の社会的使命”、“勤労の義務”により、労働者は労働によって賃金を得て家族を養い生活していくことを基本としています。
“雇用を守り生活できる賃金”は、その決定方法も長期雇用の枠組みの中で決定されればよく、企業は新卒者を一括採用して教育し、人事異動などでキャリアを積み、仕事も賃金も勤続によって上昇していく年功人事が定着しました。最低限の生活保障の生活主義や勤続によって能力は上がる職能主義は、外国人社員からすると「昇進が遅い」と映ってしまいます。
国民すべてが賃金を得て家族を養うためには、完全たる雇用政策が必要です。憲法の保障のもとに終身雇用制度は生まれ、さらに判例の積み重ねにより企業はいったん採用した労働者は解雇することが困難という慣行が確立されました。
日本人は終身雇用制度で雇用を守ってもらう代わりに、長時間労働でも文句を言わずに会社に尽くしてきました。「一生懸命に長時間働いて会社に忠誠心を示す」ことが高度経済成長における日本人の働き方でした。
日本は歴史的に「義を重んじて正しい行いをし、自分のことばかり主張せず相手を思いやる」といった武士道精神が確立しており、現在では広く海外でも知られるようになっています。
強いリーダーシップは海外でのビジネスシーンにおいて必須スキルであり、リーダーシップを学んできた外国人からすると、日本人の「思いやりの精神」は、単に優柔不断や社内決定のコンセンサスが遅いという印象になりかねません。しかし、外国人社員も日本人の「思いやりの精神」への理解が必要です。