外国人雇用の基礎知識

外国人雇用と保険手続 VOL.02

社会保障協定

 国際化が進んだ結果、海外にある企業から日本にある支店や営業所などに多くの外国人が派遣されるようになりました。その結果、日本の社会保険制度上で、「二重加入の問題」、「保険料掛け捨ての問題」、の2つの問題が発生するようになりました。

 「二重加入の問題」とは、日本で働く外国人が本国での社会保険制度に加入した上、さらに日本の社会保険制度にも加入し、2ヶ国分の保険料を負担しなければならないことです。また、「保険料掛け捨ての問題」とは、日本での加入期間が短いためにせっかく保険料を支払っても、肝心な年金を受け取ることができず、結局は保険料をかけ捨てているのと変わらないというものです。

 このような問題を解決するため、二国間で社会保障協定を締結することにより、年金制度等の二重加入を防止するとともに、外国の年金制度の加入期間を取り入れ年金が受けられるようにするものです。

 この社会保障協定の基本的な考え方は、事業所から派遣される人などの社会保険制度の取扱いに関し、就労地国の制度のみに加入することを原則とし、一時的な派遣者については、派遣元国との雇用関係が深いことを考慮して、例外的に、派遣元国の制度のみに加入するというものです。これは、二重加入を防止するため、一時的な派遣者については、就労地国の制度との関係よりも派遣元国の企業との雇用関係を重視し、派遣元国の制度に継続して加入すべきとの考え方によるものです。

 社会保障協定における「一時的」というのは、通常5年とされています。つまり、派遣期間が5年以内である一時的な派遣者は、派遣元国の制度のみに加入し、派遣期間が5年を超える派遣者は、原則就労地国の制度のみに加入するということになります。

 一方、年金加入期間通算の基本的な考え方として、一方の国の年金制度の加入期間のみでは、受給資格を満たさない場合、他方の国の年金制度の加入期間を一方の国の加入期間とみなして受給資格期間に通算することにより、年金を受けられるようにするものです。

 ただし、通算された加入期間に応じて計算された年金を、一方の国からまとめて支給するような仕組みにはなっていません。そのため、年金加入期間通算により支給される年金額は、一方の国の実際の加入期間に応じて計算された額となります。

 このように便利な社会保障協定ですが、すべての国と協定が結ばれているわけではありません。現在はドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、イタリア(準備中)で有効となっており、その他の国でも近い将来に有効となる可能性があります。また、協定を締結する国によりその内容が異なりますので、相手国に合わせて個別に内容を確認する必要があります。

 なお、外国人脱退一時金の支給を受けた期間は、協定において年金加入期間の通算対象外となります。社会保障協定における「年金加入期間の通算」とは、日本と相手国との年金加入期間を相互に通算し年金受給権を獲得できるようにするものです。

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