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インドネシア人介護士、「心配無用」仕事ぶり順調(2009/01/23)


配属本格化
 日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアから介護福祉士候補百四人が来日して半年。一月末から一斉に各地の介護施設で働き始める。言葉や習慣の違いなどを懸念する向きもあるが、一足先に仕事を始めたインドネシア人職員たちの仕事ぶりは好評。現場では順調に人材開国が進み始めたようだ。

 「おやつ、召し上がってくださいね」。肩に手をかけながら笑顔で語りかける介護士に、車いすの要介護者もほほ笑みかえした。介護士はインドネシア人のウェルヤナ・オクタフィアさん(27)。二〇〇八年九月から特別養護老人ホーム「緑の郷」(横浜市)で働いている。「誰もが温かく迎えてくれた。親兄弟が増えたみたい」

 入居者や同僚にもすっかり溶け込んだ。入居者の一人、外川勇さん(84)は「言葉などを心配していたが、まったく不便を感じない。孫に世話されているみたい」。同僚職員の山本真紀さんも「着任前は仕事の申し送りがうまくいくか心配していたが、取り越し苦労だった。むしろ彼女の明るく一生懸命な姿が刺激になっている。施設の雰囲気も良くなった」と話す。

 最近は資格試験を目指しウェルヤナさんと研修を受ける職員も現れた。ウェルヤナさんも「今後はケアプランの設計もする。入居者をもっと理解したい」と意欲的。介護での配慮は世界共通。日本でも仕事は変わらないと言いたげだ。

年賀状やメールも

 インドネシア人の介護士候補が来日したのは〇八年八月。半年間の日本語研修は一月二十七日までに終わり、各地の介護施設での勤務が始まる。彼らの活用は介護の人手不足を解消する有力手段。混乱を懸念する向きもあるが、これまでのところ職場への定着は順調だ。
 支えは施設側の入念な準備。研修中から彼らと文通などで交流し、受け入れ準備を進める施設もある。

 「あけましておめでとうございます」。千葉県袖ケ浦市の介護施設、カトレアンホームには、一月末に着任するラゼス・メジントロさん(25)ら二人から年賀状が届いた。今は日本語研修中だが、既に施設で顔合わせもしている。その際、二人が地図でインドネシアの場所を示すと、高齢者から「行ったことがあるわ」と声が上がるなど、会話が弾んだという。

 勤務環境の配慮も手厚い。イスラム教徒の彼らのため「毎日五回、礼拝する場所を施設に確保した」(副施設長の芦沢昌人さん)。着任後、近隣の日本語教室に毎週通えるスケジュールを組むことも決めている。芦沢さんは「日本語の練習のため、今はメールのやりとりをしている。すんなり溶け込んでくれそう」と安心した表情だ。

 やはり一月末から女性二人を受け入れる横浜市のさわやか苑では、〇八年に理事長の大矢清さんが自らインドネシアの病院を訪れ、仕事の仕方や待遇の希望を聞き取った。それを基に日本語の教師役や業務の指導役などを選任した。

 「彼らは介護の人手不足解消と質の向上に欠かせない。日本の介護施設の良い評判が伝わるように彼らを支えないと、人の流れが広がらない」と見る。

まず環境見極め 

実際、日本語研修も終盤にさしかかり、生活に慣れ始めたインドネシア人の間では冷静な声も出始めている。
 横浜市の研修センターで学ぶ一人は「職場に入って最初の一年間で、日本に住み続けるか決めたい」と語る。彼らは四年以内に介護士資格を取ることが働き続ける条件。だが、資格を取る前に、職場や要介護者、その家族の受け入れ姿勢を見極めているとも取れる。来日した百四人は全員がインドネシアの看護師資格を持つ。その誇りを傷つけるような対応が許されないのも確かだ。

 一月末の受け入れは、これまでのようにいかないとの声もある。既に現場で働いているインドネシア人は、来日前に日本語の会話能力を身につけていた。だが、今後派遣される人材は研修で身につけた能力が頼り。「介護施設はこれまで以上にインドネシア人職員の勤務環境に配慮する必要がある」と、外国人労働者の事情に詳しい一橋大学の伊藤るり教授は指摘する。

 そうした現状から施設の受け入れをバックアップする動きも出ている。横浜市はインドネシア人が就労した施設が負担する研修費用を助成する。母国語での相談体制やインドネシア人家族の会などの紹介も行う。同市の担当者は「仲間の助けを受けながら、彼らが働き続けられる環境づくりを、利用者やその家族も考えてほしい」と話している。

資格取得には高い壁も
 

「インドネシア人介護士候補の受け入れで特に問題なのは、来日から四年以内に介護福祉士の資格を取らなければならないこと」。日本インドネシアNGOネットワーク(東京・台東)の代表で大阪大学教授の松野明久氏はこう指摘する。資格試験はほぼ半数が不合格となる難関。しかも三年の実務経験が必要なため、彼らが受けられるのは一回だけ。「働きながら日本語と試験の勉強をする負担は大きい。四年間だけ働こうという人が増えかねない」とする。

 一方、日本介護クラフトユニオンの河原四良会長は「日本には介護の資格を持ちながら、働いていない労働者が相当数いる。人手不足を解消するには、そうした人材が働きたいと思う待遇と環境を整えることが先決」と指摘している。

2009/01/23, 日本経済新聞

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