

全国の公団住宅で外国人居住者が増え、自治会などがゴミの出し方や自治会行事の案内など外国語のポスターを張るなどの取り組みが広がっている。生活文化の違いからトラブルも起きているが、公団住宅は外国人でも比較的入居しやすく、海外から就労や留学目的で来日した人の生活基盤ともなっている。高齢化が進む旧住民との間で「共生」を探る動きが出始めた。
「夜中に香辛料を砕く音が響く」「大音量で音楽をかけてうるさい」「ゴミの日を守れない」
ゴミ分別指導
千葉県八千代市の米本団地。ベトナムや南米出身の居住者に対し、数年前から古い住民を中心にこうした苦情が寄せられていた団地自治会は三年前から、公団住宅を管理・運営する都市再生機構や市と連携して「多文化共生協議会」を設置した。
ゴミの分別をイラスト入りで分かりやすく表現したポスターや、団地生活のマナーを書き込んだパンフレットなどをポルトガル語や英語表記で作成するなどの働きかけを始めた。現在はクリスマス会を開いたり、団地内の公民館で日本語教室を開催するなど相互理解を深めるイベントにも取り組んでいる。
自治会事務局長の添田マスコさん(63)は「外国人だから、ということではなく同じ団地の仲間として声を掛け合いながら暮らせるように努力している」と話す。
都市再生機構によると、二〇〇一年に約一万件だった公団住宅の外国人世帯主の契約件数は、〇六年三月末時点で約一万七千件に増えた。約七十七万世帯を数える公団の中で、割合は年々増えている。
世帯数の40%
多くの外国人労働者が働く工場がある愛知県などでは、世帯数の四〇%が外国人という地区もある。在留資格など一定の条件さえ満たせば保証人や手数料が不要なことから、外国人のニーズは高く、今後も増加傾向が続く見通し。都市再生機構も各地の団地で外国人と日本人住民の交流行事を開催したり、特に外国人居住者の多い団地の管理サービス事務所には通訳を置いたりするなど「共生」に向けた取り組みを積極的に展開している。
従来の居住者の高齢化が進む一方、同機構は周辺の大学と協定を結び留学生に住宅を提供するなど外国人入居者の受け入れ自体に前向き。トラブルが解消されていないケースもあるが、担当者は「外国人の入居希望者は今後も増える。生活上のトラブルを恐れて排除するのではなく、日本人入居者と融和してもらえるようにすることが大切」としている。
▼公団住宅の入居資格 外国人登録法に基づく在留資格を得ていれば日本人と同様の入居条件で外国人も受け入れている。礼金などがかからず初期費用が少額で済むことなどから、民間の賃貸住宅に比べて、来日したばかりの外国人でも入居しやすい。一九八〇年に都市再生機構の前身の旧住宅・都市整備公団が定めた内規では「一年以上の在留経験」が必要とされたが、八七年に撤廃、入国直後でも入居できるようになった。当時の外国人入居者は千六百人程度。
2008/01/05, 日本経済新聞
海外で研修機関を設立し現地の人材を育成する日本企業が増えている。十―二十歳代の学生を集めて技術を教える。新興国の経済成長を背景に技術力の高い人材の需要が増加、海外でも長期的な人材戦略が必要となり始めている。
▼技術者派遣のメイテックは二月、中国・四川省の成都に専門学校を設立する。日系企業への就職を目指す現地の大卒者が対象だ。
期間は六カ月で学生は電気回路や制御プログラムの設計技術などを学ぶとともに、日本語や日本企業に特有な仕事の進め方、コミュニケーションの方法も教わる。授業料は一万五千元(約二十一万円)と現地の初任給の約半年分。
中国でこうした学校を設けるのは、二〇〇四年夏に第一号を杭州で設立して以来五校目。同社の中国法人が企業から料金を得て卒業生を紹介。これまで卒業者の約半数が現地の日系企業に就職した。このほか約百八十人が来日して日本のメーカーに派遣技術者として勤めている。
中国など海外進出する日本のメーカーは現地に設計や品質管理の機能を移管し始めており、技術者の現地採用も進めている。だが日本企業ならではの働き方になじめずに転職する技術者が後を絶たず、採用に苦慮する企業も多い。メイテックは技術だけでなく日系企業の慣行を身につけた技術者を育てることで日本企業向けのビジネスを広げる。
福田完次取締役は「外国人技術者が将来不可欠になるのをにらみ、日系企業が国内外でアジア人技術者を採用できる環境をつくる」と語る。
トヨタ自動車は昨年八月、インド南部のバンガロール市にある生産子会社の敷地内に全寮制のトヨタ工業技術学校を設立した。経済的に高校進学が難しい中卒の若者六十四人を受け入れて、三年間で工業科目や自動車組み立てなどの実技を教える。費用はトヨタ子会社が負担。強制力はないが、卒業後トヨタ子会社に入社し生産現場を担う人材になってもらいたい考えだ。
インドの国内総生産に占める製造業の割合は約二割。IT(情報技術)技術者は競争力が高いが、製造業を支える人材の質の向上は道半ばだ。トヨタの木下光男副社長は開校式典で「技術の革新に対応できる人材を質・量ともに確保することが必要」と強調した。
▼新興国に生産・開発拠点を設ける日系企業や海外企業は増えつつあり、優秀な技術系人材の獲得競争が激化し始めている。
経済産業省の調査によると、日本企業が海外で雇用する従業員の数は〇五年度に約四百三十六万人と九年前の一・五倍に増えた。製造業の海外での生産比率は二割弱に達し、人口減少で縮小する国内市場に対し、潜在的な成長力がある海外市場に活路を見いだす企業が増えている。海外企業との競争激化に伴い、現地の生産・開発拠点で採用する人材の質が問われ始めた。
日系企業が学校の形で研修機関を現地に設けるのは、一定以上の技術・技能を持つ人材を囲い込むためだ。さらに長期間かけて技術・技能を身に付けさせて昇進させる日本企業の慣行を理解してもらったり、自社の社風に少しでもなじんでもらったりすることで入社後の定着率も高めて長期的な人材育成を狙う思惑がある。
製造業だけでなく外国人従業員がすでに定着している業界にも同様の動きは広がっている。海運大手の日本郵船は昨年六月、フィリピンの船員供給会社と共同で四年制の商船大学を現地に設立した。将来船長や機関長など幹部船員になる人材を育てる狙いだ。
船員の八五%を外国人が占める日本郵船はこれまで世界各国の大学と提携し、学生の乗船実習に自社船を提供することなどで人材を確保してきた。だが近年は世界的に船舶数が増加し船員不足が徐々に深刻化している。「今後の船員不足を見越して今から即戦力を養成して対応する」(船員戦略プロジェクトグループの猪野木哲二グループ長)
フィリピン人は同社の船員の中で最も多く、新設した大学では最新鋭の操船シミュレーターなどを導入した教育を実施する。昨夏入学の百二十人は一一年夏に船員として働き始める予定だ。
◇ ◇
これまで日本企業は外国人にとって働きやすい会社と映らないことも多かった。現地法人のトップの多くを日本人が占める現状に「将来のキャリア形成が描けない」という不満があることなどが理由だ。例えば中国では比較的短期で昇進や賃金の向上を目指す志向が強いため欧米企業が人気で、日系企業に勤めても転職する例が多いという。
学生は卒業時に学校の設立母体の企業に就職する義務はなく、仮にその企業になじんで入社しても将来見通しが不透明では定着はおぼつかない。人材確保を成功させるには「外国人従業員に魅力的なキャリア形成や技術習得の道筋を明示する必要がある」(企業の人材戦略に詳しい日本総合研究所ビジネス戦略研究センターの山田久所長)といえそうだ。
2008/01/07, 日本経済新聞
一九〇八年にブラジルへの移民が始まってから百年。二世や三世の還流で外国人登録するブラジル人は約三十一万人を超え、日本社会との接点を徐々に増やしている。
東京・両国の十階建てビル。全館が格安国際電話サービス会社「ブラステル」本社だ。創業者で共同社長の田辺淳治(47)と川合健司(50)は日系ブラジル人二世。サンパウロ出身の二人は日本に留学した後、九六年に東京で起業、約十年で同社を年商百億円規模に育て上げた。
ブラジルから来た出稼ぎ労働者向けサービスから始め、低料金と使いやすさで他の在日外国人や日本人海外留学生に顧客層を拡大、今では法人向けも手がける。田辺は三十五カ国・二百二十人の社員が行き交うオフィスで「デカセギの枠を越えて働く人は確実に増えている」と語気を強める。
百年前、笠戸丸に乗り込んだ第一陣を皮切りに、約二十五万人が遠いブラジルに夢を託した。現在はそれを上回る数のブラジル人が日本に滞在する。「言葉の壁」のため多くは単純労働にしか従事できないが、ブラステルの二人のように起業するケースも増えている。
仕事の成功は定住化につながる。日系二世、三世に就労制限のない在留資格を与えた九〇年の入管法改正も追い風となり、十数年前には「二―三年」だった平均滞在期間は約八年に延びたという。永住資格取得者も二〇〇六年末で七万八千人を超えた。
茨城県かすみがうら市に住む日系二世のフォークリフト運転手、マリオ・コソバ(42)は昨春、念願のマイホームを手に入れた。費用二千二百万円は三十五年ローンを組んだ。当初は「数年で帰る予定」が、結婚と子供の誕生を機に「治安が良く仕事もある日本にずっと住もう」と決意。滞在期間は十五年を超え、ブラジルの家は売却した。
自宅購入を目指す日系人は年々増え、ポルトガル語の無料雑誌には不動産広告が急増している。日系三世の武蔵大学准教授アンジェロ・イシ(40)は「家を買うのは定住の意思表示」と指摘。「短期滞在が主流だったブラジル人にも、韓国籍や中国籍の人々と同様、在日意識が芽生えている」と分析する。
2008/01/12, 日本経済新聞
外務、法務両省は日本での長期滞在を希望する外国人へのビザ(査証)発給の際、日本語能力も審査対象にする新制度を創設する方向で検討に入った。両省の課長級による協議を近く開始し、対象者や条件を詰める。高村正彦外相が十五日の閣議後の記者会見で明らかにした。
2008/01/15, 日本経済新聞
携帯電話向けサイトを運営するウェブドゥジャパンは人材紹介子会社を通じて、国内にいる外国人留学生向けの採用・就職支援事業に参入する。三月に東京都内で企業と学生を集めて就職説明会を開催。社会人の中途採用や海外の日本人留学生の採用・就職の支援も手掛けており、人材関連事業をさらに強化する。
採用・就職支援を手がけるのは昨秋に人材関連事業を分割して設立したベインキャリージャパン(東京・千代田)。三月八日に大手電機や通信、総合商社など約五十社が参加する「外国人留学生向け就職フェア」を開催する。留学生千五百―二千人の来場を見込んでおり、企業説明や個別の面接などを実施する。
2008/01/23, 日本経済新聞
日本百貨店協会は外国人観光客の誘致策を強化する。会員企業が外国人客の応対に利用できる通訳コールセンターサービスを二〇〇八年度中に始めるほか、海外での広報活動も拡充する。来日外国人の数は年々増加しており、特にアジアからの観光客が買い物を目的に訪れるケースが増えている。今後も成長が見込めることから、業界を挙げて来店増に取り組む。
通訳コールセンターは会員百貨店で働く販売員が外国人客の応対に困った際に電話すると通訳をしてくれるサービス。JTBが観光事業者向けに提供する「多言語サポートコールセンター」を利用する。英語、中国語、韓国語に対応。〇九年三月末までに始める予定。
本格開始に先駆け、今月二十日から期間限定で試験サービスを始めた。今年二月末まで実施。利用状況などを分析し、会員百貨店の要望を聞き取ったうえで、本格サービスに反映させる。
また、百貨店協会では外国人が店頭に来た際に指さしで意思疎通ができる「指さし会話集」の発行も検討している。販売員が常時携帯できるものにする計画で、複数の言語に対応させる。
海外でのPRも積極化する。日本への観光客増加を狙って中国で開催する「ジャパンフェスタ」などのイベントに参加する計画だ。
百貨店を訪れる外国人は増加している。同協会が会員企業にアンケートしたところ、八割の店舗が「前年に比べて外国人観光客の来店が多くなった」と回答した。一方で課題として、言葉の壁による接客の難しさを挙げる企業が多かった。
国際観光振興機構(JNTO)によると訪日外国人数は〇七年一―十一月の推計で前年同期比一三・七%増。特に韓国が二三・八%増、中国が一六・九%増とアジアからの訪日が増えている。
同機構が〇六年夏―〇七年春に訪日した外国人旅行者に動機を尋ねた調査では、「ショッピング」が三四・八%(前年比一〇・二ポイント増)と過去約二十年間の調査で初のトップになった。
2008/01/25, 日経MJ
日本国内の不足を補う
自動車、機械など製造業各社がアジアの新興国で技術者を大量採用する。日産自動車はインドとベトナムで今後三年程度をめどに四千人を新規採用、技術者の海外比率を二倍の約四割に引き上げる。東洋エンジニアリングはインドの設計人員を千人増員した。団塊世代の退職や少子化による国内の技術者不足に対応し、豊富な人材を抱える新興国を製造だけでなく「頭脳」の拠点にも活用する狙いで、雇用のグローバル化が加速する。(国内の技術者不足は3面「きょうのことば」参照)
日産は現在、世界に約二万人の技術者を抱え、うち海外は欧米を中心に約二割。今後はまずインドで二月に約三百人の技術者を確保して同国初の開発拠点を稼働する。現地で生産・販売する自動車の車体や部品を開発するほか、一部のソフト開発も日本から移管。現地生産が本格化する二〇一〇年代初めに二千―三千人に増やす計画だ。
ベトナムは六百人から三年後に二千人に増やす考え。アジア以外でもメキシコで技術者を約三百人から千人弱まで増やす計画。いずれもソフト開発やコンピューターを使う設計などを担当する。
インドや中国での技術者採用はソフト開発者の慢性的な不足に悩む情報技術(IT)業界で先行していたが、こうした流れが多くの製造業に広がり始めた。
東洋エンジニアリングは〇五年に約八百人だったインドのプラント設計会社の人員を昨年末までに約千八百人に増員。IHIはベトナムに海外初の船舶設計会社を設立済みで、日本で建造する商船の一部設計を移管する。自動車用金型大手の宮津製作所(群馬県大泉町)はインド設計会社の技術者を五年以内に二・五倍の五十人程度に増員し、同社の設計業務の半分程度を現地でこなす。
各社が技術者確保を急ぐのは、技術開発を支えてきた団塊世代の大量退職が昨年から始まり、少子化や理工系離れで新卒者を国内で確保するのが難しくなっているため。賃金水準は日本の半分以下だが教育水準の高い新興国で積極採用。新興国を中心に成長市場向け戦略製品の開発強化も狙う。日本の拠点は中核的な技術の開発などに特化させ、内外の分業を敷く。
経済産業省の調査によると、一九九六年度末に百三十万人弱だった国内製造業の海外の雇用規模は〇七年九月末で二・五倍の三百二十万人強に拡大。アジアはうち約七割を占める。現地工場を通じた製造分野の雇用が中心だったが、開発分野が加わることでアジア戦略は新しい段階に入る。
欧米大手も新興国で技術者採用に動く中、争奪戦は激化する見通し。日本勢が計画通り人材が確保できなくなったり、採用・教育コストが上昇したりする可能性もある。
【表】アジアで技術者採用を増やす主な企業
日産自動車 インドとベトナムで既存人員を含めて計約5000人体制に
トヨタ〓自動車 中国に開発拠点の設置検討
ホ ン ダ 今年、タイや中国に開発拠点や研究所を開設
ス ズ キ 3年後にもインドの人員を2.5倍の1000人に。アフリカ向けなどの車を開発
デンソー フィリピンで約110人の自動車制御用ソフトの技術者を年内に確保
東洋エンジニアリング インド設計子会社の人員を07年末に約1800人に増員
千代田化工建設 インド設計子会社で契約社員含め約700人確保
コ マ ツ 中国に開発センター、08年中に開発技術者40人規模に
日立建機 2010年までに中国の開発技術者を100人に増員
I H I ベトナムに船舶設計会社
富 士 通 2010年にもインド1万人に
2008/01/28, 日本経済新聞
ブラジル人に日本語を指導 目的説明、ミス防ぐ
「語学教育」企業の協力に欠かせず
技能伝承の相手は日本人だけではない。日本の工場で装置を組み立てるブラジル人、研究所で設計するベトナム人、日本企業の中国工場で働く中国人など、日本企業は様々な外国人を活用している。いかに効率良く技術を伝え、彼らの力を高めるかが企業の競争力を左右する。各社の取り組みを追った。
「これはいくらですか」「千円です」「もう少し安いものはないでしょうか」。買い物や病院などでのやりとりを想定し、言葉のキャッチボールをこころがける。
ここは街中の日本語学校ではない。ヤマハ発動機で電子部品の実装機などを製造販売するIMカンパニー早出工場(浜松市)の終業後の一室。昨年始まったブラジル人対象の日本語教室だ。
二月に再開、今年から品質管理で重要な、工程で良品の割合を示す「直行率」など、仕事で使う言葉も教える。事業推進部の石岡修部長(48)は「専門用語を含めもの作りに必要なコミュニケーション能力を身に付けてほしい」という。
企業が派遣社員の外国人に工場で直接語学を教えるのは珍しいが、早出の製品は特注品が多い。マニュアルだけでは思わぬトラブルにつながる。
「あれ、どうしたんだろう」。二年ほど前、機械のボルトが締まっていない不良が発生し、ある作業員は首をかしげた。三百カ所のボルトが一カ所でも締まってないとすべて検査をやり直す。作業ロスは深刻だった。
「原因はブラジル人の作業者とのコミュニケーション不足」と石岡部長は打ち明ける。ある工程で、ボルトを締めた部分にペンでマーキングするが、緩みを確認しないまま印だけ付けていた。ポルトガル語のマニュアルを見て作業しても、目的を理解しないと思わぬミスが続く可能性がある。
同じころ、石岡部長は企業向けの数々のセミナーに参加、航空会社などの事例から会話と品質が密接に関係があり、早出にもあてはまると感じていた。ボルト事件で会話の大切さを痛感した。
IMカンパニーは総勢千人強のうち約五百五十人が派遣社員。うち約百二十人をブラジル人で占め、重要な作業を担う。二〇〇六年秋に日本語教室を開いたら参加するかアンケートしたところ、回答者百人の半分強が「受けたい」と答えた。
〇七年四月から三カ月、毎週水曜日の勤務後の夕方、計十回の教室がスタート。九月から十一月に二回目、今年は二月後半の再開に向けて、より効果的な指導方法を検討中。講師は財団法人・浜松国際交流協会(HICE)からのボランティアが、対話形式で授業する。受け入れ時の研修や技能検定とは別に、純粋に日本語を学ぶ場だ。
早出は特注品が八割、作業内容の理解が特に求められる。作業員一人あたりの持ち時間は六百分とすると、一日に一製品にかかりっきりの場合もある。同社でも二輪車組み立てのように作業が細分化し、決まった動作を繰り返す工場よりコミュニケーションの重要度は高い。石岡部長は「言葉を話せないと品質に影響が出る」と指摘する。
製造業共通の問題もある。早出工場の週一回の品質会議。不良の原因を究明して再発防止策を練るために、問題カ所を担当したブラジル人に説明を求めると、複数のブラジル人が「つるし上げだ」と憤慨した。会議の意味や重要性を説明し理解してもらったという。
石岡部長はHICEに協力、昨秋立ち上がった浜松市の企業日本語カリキュラム開発検討委員会のメンバーに加わった。文化庁の委託事業の一環で、企業内で使われる言葉を調べ、日本語教育のカリキュラムを作り、他の企業にも展開しようという取り組みだ。
浜松など外国人労働者が多く暮らす二十三の地方都市が集う外国人集住都市会議が昨年十一月末、岐阜県美濃加茂市で開かれ、参加者から日本語教育の重要性を指摘する声が相次いだ。外国人の多い地域で日本語の指導を担う教室の設置を政府に求めることなどでは一致したが、行政任せの対策には限界も見える。
参加自治体で外国人登録者は浜松市が断トツ。このほか愛知県豊田市、三重県鈴鹿市、群馬県太田市などが上位。自動車や電機メーカーの工場があり、労働力として流入してきた。生産ラインで人手不足を補うためで、言葉や教育は置き去りにされがち。ヤマハ発動機のように企業が協力する例はまだ少ない。
浜松国際交流協会(HICE)の日本語コーディネーター、堀永乃さん(32)は「人口減少社会を迎えて、日本は労働力をどこに求めればよいのか。外国人への日本語指導は派遣会社の仕事だと考える姿勢では、そこで企業の発展は止まる」と苦言を呈する。
浜松市は一万八千人のブラジル人をはじめ、外国人登録者数が全人口の約四%にあたる三万人を超える。堀さんは他の大手企業にも日本語によるコミュニケーションの大切さを説いて回る。
海外からの労働者、10年で倍以上
日本で働く外国人労働者は年々増えている。厚生労働省のまとめでは、二〇〇六年六月時点の直接雇用の外国人労働者は約二十二万二千九百人。〇五年の一二・四%増で、十年前の一九九六年の倍以上。少子高齢化による日本人労働力の減少や、競争力強化のために人件費の安い外国人の活用が進んでいるとみられる。
増加が目立つのが、製造業で働く中国、韓国など東アジアからの出身者。〇二年は約二万一千七百人だったのが、〇六年は約四万六千六百人と倍以上になった。製造業で働く全外国人労働者に占める東アジア出身者の割合は、〇二年の二六・二%から〇六年は三九・九%に増えた。〇六年の製造業の中南米出身者は約四万六千五百人で、三九・八%と東アジアと拮抗(きっこう)。うち日系人は九割以上を占める。
2008/01/29, 日経産業新聞
漢字のミス相次ぐ
社会保険庁が、年金システムに未入力の約千四百三十万件の年金記録のコンピューター入力作業を中国人など外国人の派遣作業員に任せていたことが明らかになった。
漢字の氏名の入力ミスが相次いだことも発覚。違法派遣問題で厚生労働省から昨夏に業務停止命令を受けたフルキャストに作業員の派遣を委託し、千三百人の作業員のうち五十―六十人の外国人が昨年末に入力作業に従事していたという。
同日の民主党の厚生労働部門・総務部門合同会議で明らかになった。社保庁は入力ミスの件数は明らかにしていない。入力ミスは「日本人に修正させた」と弁明している。フルキャストは人件費を抑えるため、外国人を派遣したとみられる。
未入力記録のコンピューターへの入力作業は昨年十二月初旬に始まった。フルキャストが外国人を派遣したのは十二月十―二十日。フルキャストは社保庁に対し、漢字圏の作業員を派遣するので問題はないと説明していたが、姓と名の分け目を間違い、「金田」という名字を「金」と記入するなどしていたという。
2008/01/31, 日本経済新聞
政府の経済財政諮問会議は三十一日の会合で、新しい経済成長戦略の骨格を了承した。成長が続くアジアの活力を日本に取り込むため、留学生や高い技能を持つ人材を受け入れる体制を整える。金融資本市場の活性化にも早期に取り組む。同時に議論したマクロ経済運営については、市場の混乱に政府・日銀が連携して対応していく方針を確認した。
新戦略は福田康夫首相の考えを多く採り入れ、人材育成や雇用拡大に重点を置いた。今後の成長に不可欠な国際化との関係では、高度な技術を習得する外国人実習生の受け入れ態勢を整備。留学生の受け入れとともに、小学生への英語教育を必修にすることなども検討する。
雇用拡大は「新雇用戦略」として、子育て中の女性が働きやすくなるように保育所の受け入れ児童を増やすほか、育児休業を複数回に分けて取れるようにする。高齢者には能力を磨くための支援策を設ける。
会議後に会見した大田弘子経済財政担当相は雇用拡大への意欲を強く打ち出した成長戦略について「生活の場からの成長を目指すことに特徴がある」と説明した。
諮問会議の民間議員は同日の会合で、成長戦略の中でも早期に着手すべき項目を提案。金融資本市場の活性化に向け、現在は原則として日本の株式に限られる上場投資信託の対象指数を広げる。
戦略の骨格に基づく具体的な政策は今春をめどに詰める。政策は六月にもまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に反映する計画だ。
2008/02/01, 日本経済新聞
静岡県は四日、外国人労働実態調査結果(速報)を発表した。外国人労働者が増える中、初めての基礎データ収集調査。外国人本人に聞いた健康保険の加入状況は、二六・二%が「入っていない」と回答。派遣・請負の間接雇用が六一・八%を占め、十五年以上県内に滞在する人は一七・四%だった。
調査は昨秋、派遣元と派遣先企業三千社と、十六歳以上のブラジル人五千四百三十八人にサンプル調査し、回収率はそれぞれ三七%と三五%だった。
企業に聞いた外国人雇用のプラス面は「突発的な業務量の増減に対応可能」が五三・二%、トラブルは「定着率が低い」が六一・七%とそれぞれ最も多かった。業務上のけがは派遣元・派遣先ともに八―九割が労働者側の不注意と見る。
労働者本人に聞いた仕事の業種は輸送機器が五九・八%、電子機器が七・八%など。過去一年の世帯年収は二百五十万―三百五十万円が一八%と最多。百五十万円未満が一一%いる一方、七百五十万円以上も二%いた。居住地になんらかの愛着を感じる人は六九・一%を占め「どちらかといえば」を含め愛着を感じない人の割合は四・〇%だった。
2008/02/05, 日本経済新聞
法務省は国際機関と連携し、外国人が入国審査時に示すパスポートが本人のものかどうかを即時に判断できる照合システムの構築に乗り出す。紛失したり、盗まれたりしたパスポートに関する世界各国の情報を利用することで、外国人が他人になりすまして不正に入国するのを防ぐ。テロ対策を強化する狙いで、二〇〇八年度から全国の港や空港に順次、導入していく方針だ。
照合システムは国際刑事警察機構(ICPO)が世界百二十三カ国の旅券発給機関と協力して集めた約千四百万件のデータベースを活用する。ICPOの最新情報を利用できる端末を国内に設置する仕組みだ。
ICPOが持つ情報は盗難・紛失パスポートに関する旅券番号や発行年月日、紛失・盗難の事実関係など。外国人が入国時にパスポートを提示した際、こうした情報とつき合わせ、不正取得したものでないかを瞬時に判断する。法務省では「新システムを導入することで不審者を見つける精度は格段に上がる」(入国管理局)とみている。新システムはスイス、ベルギー、米国、フランス、シンガポールなどがすでに試験的に導入している。
2008/02/09, 日本経済新聞
少子化で労働力減少
人材サービス会社が日本企業の外国人の採用拡大を商機ととらえ、紹介事業を強化する動きが広がってきた。対象は技術者や国際営業要員などホワイトカラーの「正社員」。就労希望者を国内外で募り、仕事を紹介する。高齢化で見込まれる日本人労働者の減少や事業のグローバル展開に備え、外国人を積極活用する会社が増えてきたことが背景にある。
パソナグループは日本の大学で学ぶ新卒の外国人留学生の紹介を始める。専用の求人サイト「グローバルルーキー2009」を今月下旬にも開設、日本企業への就職希望者を集める。顧客として自動車、電機といったメーカーや商社など国際業務の多い企業を想定している。国際営業や海外情勢を分析する人材や海外現地法人の幹部候補への引き合いが多いという。三年後をメドに約千社の利用を目指す。
転職サイトのダイジョブ(東京・港)は今春をメドに外国人留学生向けの就職情報サイトを開く。英語と日本語を話せるバイリンガルが対象。金融機関やIT(情報技術)企業など約百の求人案件を掲載。当初一年間で一万人の利用を見込む。
法務省によると日本企業と雇用契約を結び、仕事の内容が「技術」や「国際業務」など出入国管理法の規定を満たした場合、在留資格が得られることが多いという。経済産業省の試算では専門・技術的分野で日本に在留する外国人労働者は二〇〇六年度で約十八万人。
マレーシアやインドなどで約五百万人が登録する転職情報サイト運営のマレーシア企業の日本法人、ジョブストリート(東京・杉並)は技術者の紹介事業を始める。日本企業に代わって採用面接するほか、就業前に約千時間の日本語研修をする。三年後に年間三百人の紹介を見込む。
ソルバーネットワーク(東京・渋谷)は無料求人誌を本格的に立ち上げる。外国人留学生が多い国内の大学のほか、米スタンフォード大学など日本語学科がある海外の約千の大学や教育機関で配布する。中国やベトナム、中東欧などでの事業拡大に積極的な企業の需要を期待している。
少子高齢化で日本の三〇年の労働力人口(十五歳以上の就業者と求職者)は〇六年の約六千七百万人から一千万人強減る見通し。女性、高齢者の活用などと並んで、外国人の雇用は今後の課題だが、受け入れ態勢などで未整備な点も多い。日本経団連は国際競争力を高めるためにも、専門知識を持つ外国人の受け入れを拡大することを提言している。
2008/02/15, 日本経済新聞
三井住友海上火災保険は保険業界で初めて、外国人社員を対象にした本格的な実務研修制度を導入する。初年度は日本、米国、英国、シンガポールの四拠点で、計七―十四人を受け入れる。国内の損害保険市場は頭打ちで、海外事業の拡大は急務。研修を通じて海外拠点の業務レベルを底上げし、国際競争力を高める。
同社が拠点を持つ三十七カ国・地域から幹部候補生を中心に対象者を選抜。シンガポールなら人事と広報、商品開発や財務は米国など、テーマ別に設定した国で実務に就く。実習期間は二週間―三カ月。往復の交通費の半額を本社が負担する。
将来は十数カ国の海外拠点で実習生の相互受け入れを計画している。国を超えて互いの職場事情を知り合い、社員の国際感覚を磨く狙いもある。
同社はグループ従業員二万四千人のうち、約二五%の六千人を外国人が占めている。
2008/02/18, 日本経済新聞
中堅の人材派遣各社が中国で採用した技術者の国内企業への派遣を活発化させている。賃金や技術力の高い日本での就労を望む中国人技術者は多い一方、技術者不足が深刻化する国内では外国人のニーズが高まっているためだ。大手に加え中堅が本格参入することで、国内向け中国人技術者の派遣市場の拡大に拍車がかかりそうだ。
技術者専門のトラスト・テック(東京・港)は四月、上海と大連などで集めた電気分野の技術者の派遣を始める。日本で正社員として採用、国内の自動車・電機などのメーカーに派遣する。設計や開発業務を中心に年間五十人強を見込む。
製造業向け派遣のティー・シー・シー(宇都宮市)は五月にも、現地のコンピューターソフト開発などIT分野の技術者派遣を始める。上海の人材会社との合弁会社を通じて技術者を集め、初年度約十人、二年目から年間三十―五十人の派遣を目指す。
アクシスコンサルティング(東京・千代田)は年内をメドに技術者募集の拠点となる駐在員事務所を設ける方針。候補地は北京や上海など。複数の人材サービス会社と契約し人材を探していたが、自社での発掘で安定した人材供給体制を整える。今後一年かけてCAD(コンピューターによる設計)技術者など百五十人を派遣する計画だ。
技術者派遣最大手のメイテックは大連など現地に技術者育成の拠点を五カ所設置。日本語や日本の商慣習、技術などを教え、国内企業に派遣している。
中国では技術者人口が急拡大している。中国科技統計年鑑によると二〇〇六年の科学者・エンジニア数は約二百八十万人と前年から約二十四万人増えた。「中国の新卒市場は就職難になりつつある」(アクシスコンサルティング)との指摘もある。
法務省の調べでは仕事の内容を「技術」として在留資格を与えられた〇六年の外国人数は約一万人と五年前と比べて二・五倍に達している。
2008/03/01, 日本経済新聞
政府は外国人研修・技能実習生の保護策を拡充する方針を決めた。母国語で相談できる電話窓口を設けるほか、受け入れ先の企業が倒産した場合も研修を続けられるよう支援する。労働環境を改善するため、新たな在留資格の導入も検討する。アジア諸国を中心に日本で技術を学ぼうとする外国人が増えていることから、受け入れ体制を整える。
法務、厚生労働、経済産業など関係省庁が連携し、二〇〇八年度から順次着手する。
研修生向けの電話窓口は財団法人・国際研修協力機構(JITCO)と連携して運営。中国語、ベトナム語、インドネシア語など研修生の母国語で相談に応じる。土日や夜間などでも対応できるようにするほか、相談で得た情報を不正労働を強いる企業の発見などにも役立てる。
新たに入国する研修・技能実習生全員を対象に、国内の労働法制や制度などについて説明する講習会も開く方向。
2008/03/03, 日本経済新聞
少子高齢化の進展による労働人口の減少は、人材サービス業界にとって逆風以外の何ものでもない。メーカーや金融機関などに優秀な人材を吸い上げられる現状で「待ち」の姿勢を取っていては生き残ることはできない。足りない人材は世界から、仕事の場所は世界へ――。派遣各社はアジアを中心に世界各地に拠点を広げ、現地でのビジネスモデル構築に乗り出している。
国内で人材不足感が顕著なのがエンジニアだ。少子化の流れに加えて、若者の理数系離れがもろに影響。機械系、ソフト系ともに、大学や専門学校の新卒者だけを見ていては、企業からのアウトソーシング需要に応えることはできない。
◆ ◇ ◇
技術者派遣最大手のメイテックは昨年十月、四川省に中国で五つ目となる専門学校を設立した。半年にわたって高度な実用技術のほか、日本語や日本のビジネスマナーを教える施設の使命は、日本国内の企業や中国の日系企業で活躍できるエンジニアを育てることだ。
メイテックは二〇〇四年に杭州の浙江大学と提携し、中国で最初の専門学校を設立。その後、大連市や広州市などにも相次いでエンジニア育成拠点を開設した。上海市や広州市などに多く進出している日系企業に人材供給を進めるとともに、メイテックグループでも採用。これまでに百五十人以上の卒業生を「ブリッジエンジニア」として日本に受け入れている。
「新卒頼みではもはや無理。外国人エンジニアは必要な選択肢」(西本甲介社長)というのが基本的な考え方。メイテックが〇八年度に予定する採用人数は一千人以上と膨大だが、国内の技術者の奪い合いはさらに激しくなりそうな様相。中国からのブリッジエンジニアは今後も増やしていく方向という。
丸紅とみずほ銀行が出資するアヴァンティスタッフ(東京・千代田)は昨年九月、中国の二大学及びマイクロソフトと提携して江蘇省で理系学生に日本語を教える取り組みを始めた。南京市にある技術センターに年間一千人の生徒を受け入れ、そのうち二割以上に日本での就業先を紹介する計画だ。
中国最大の国営人材サービス会社、中国国際技術智力合作公司(北京市)によると、中国での新卒学生の就職率は文系、理系ともに六割程度。就職難の状況が続いているという。アヴァンティは北京大学系の企業グループとも業務提携ずみ。日本での就業先の紹介や、学生に対する日本語研修の請け負いなど、関係づくりに余念がない。
◇ ◆ ◇
リクルートエージェント(東京・千代田)は昨年十一月、フィリピンの技術者を日本に紹介する事業を開始。フィリピンの人材会社と組み、日本での就業希望者の橋渡し役を買って出た。在日外国人向けの通信事業を手掛ける会社に福利厚生業務を委託、技術者の早期退職を防ぐ取り組みを導入することで、企業の採用意欲を促している。
自動車や電機など日本メーカーの拠点拡大などに伴い、現地の日系企業を対象とする人材サービスに商機を見いだす動きも活発になっている。テンプスタッフは昨年十月、インドネシア・ジャカルタの日系企業の拠点が集中するビルに事務所を開設。従業員の採用代行やビザ取得の代行なども手掛けている。
アジアに進出する企業の頭を悩ませているのは、現地で採用した人が定着しないこと。インドネシアも例外でなく、一億人以上の労働人口を持つ一方で、労働者の離職率は約一〇%と高い。テンプスタッフは相互理解を高めるため、日本語や電話応対、接客などビジネスマナーの研修を用意していく方向だ。
メディア事業も手掛けるインテリジェンスは昨年九月、中国で新卒学生向けの就職情報サイト事業を始めた。まず上海に拠点を開設して営業を開始、十一月には北京に進出した。中国では同様のサービスはないという。すでに中国系企業を中心に約三万件の求人案件を掲載し、約十万人が利用している。三年後には二百万人程度の利用を目標に掲げている。
◇ ◇ ◆
フジスタッフホールディングス傘下で製造業派遣のアイライン(東京・千代田)はタイ・アユタヤの民間工業団地の運営会社と提携。三月に敷地内に事務所を開業し、約二百社の工場が並ぶ「一大製造拠点」で人材の供給を始めた。
同工業団地の労働者は約十万人でそのうち二―三割が派遣社員。「指定派遣会社」のアイラインが掲げる目標は三年後に二千人の派遣と手堅いが、工場の内訳は約七割が日系企業だ。製造業派遣には最大三年の期間制限があり、〇九年には日本の工場が一斉に「抵触日」を迎える。拠点を海外に移すケースも増えるとみられ、タイではアイラインが人材供給の主役となる可能性がある。
マイスター60(千葉市)など十二社が参画するシニアセカンドキャリア推進協会(SSC)やパソナグループは定年を迎えたシニア層に中国での仕事を紹介する取り組みを開始。マンパワー・ジャパン(横浜市)も世界に広がる拠点網を利用して香港など海外の仕事を紹介する事業を始めるなど、世界で働く道筋も広がりつつある。
2008/03/14, 日経産業新聞
大阪商工会議所は「中堅・中小企業の人材確保に関する要望」をまとめ、二十四日、福田康夫首相や関係省庁に送付した。団塊世代の退職や少子高齢化で働き手の確保が難しくなるなか、若年層や子育て世代、シニア層などの就業促進が必要だと指摘。特に外国人を重要な労働力と位置づけ、能力や意欲のある外国人への就労要件緩和や研修制度の拡充を求めた。
定職に就かない若者や子育て世代については、職業訓練の受講者を公的に認定して就職に役立てる「ジョブ・カード制度」の利用促進に向けた環境整備を要請。シニア層の就労では、雇用に前向きな企業への奨励金を引き上げたり、法人税を控除したりする案などを示した。
2008/03/25, 日本経済新聞
政府は二十五日の閣議で、二〇〇九年度までの三年間で取り組む「規制改革推進のための三カ年計画」を決定した。規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が昨年末に取りまとめた第二次答申を踏まえ、改定したもので、外国人研修・技能実習制度の見直しや保育士資格の受験要件緩和などの規制改革を盛り込んだ。
保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」については、薬事法で未承認の一部の医薬品を使ったがん治療技術にも適用範囲を拡大する。全面解禁は見送った。
現行の外国人研修・技能実習制度では研修生は企業で一年間の実務研修、二年間の技能実習ができるが、実務研修では労働関係法令は適用されない。同計画では実務研修中も労働基準法を適用するよう法改正を求めている。
農業分野では、新規参入に必要な賃借価格などの農地情報に関して、関係機関での一元管理と公開の徹底を促している。
法務分野では司法試験合格者数について以前の三カ年計画では「一〇年ごろまでに年間三千人程度に拡大し、その後も増員を検討する」としていたが「増員を検討する」は削除。法曹の質の確保にも配慮しながら一〇年以降のあり方を検討するという表現にとどめた。
2008/03/25, 日本経済新聞
法相の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」(座長=木村孟大学評価・学位授与機構長)は二十六日、日本に滞在する外国人の在留管理制度の見直しを鳩山邦夫法相に提言した。外国人登録証明書を廃止し、新たに「在留カード」(仮称)を発行して国が情報を一元管理できるようにする一方、在留期間上限を原則三年から五年に延長することを盛り込んだ。法務省は、来年の次期通常国会に出入国管理・難民認定法改正案など関連法案の提出を目指す。
次期通常国会提出目指す
提言は、観光や就労、研修など様々な目的で日本に在留する外国人が増加する一方、不法滞在者も増えている現状に対応する。正確な情報を把握して在留管理を強化しつつ、適法に在留する外国人の利便性は向上させることを狙いとしている。
外国人登録証明書は市区町村が発行しているが、新たな身分証となる在留カードは法務省入国管理局の発行に切り替え、同省が情報を一元管理できる仕組みとする。
カードには氏名や顔写真、国籍、在留期間などを記載。外国人に居住地や勤務先の変更届け出を義務付けるとともに、就学・研修先の学校や企業などから国が情報提供を求めることができる制度を設け、これらの情報をカードに反映させる。
法務省から情報の提供を受けた市区町村は、日本人の住民基本台帳に相当する外国人台帳を新たに整備し、医療などの行政サービスを外国人が受けやすくする。在日韓国・朝鮮人ら特別永住者はカードの所持は不要だが、台帳には掲載する。
管理を厳格にする一方で、適法にカードの交付を受けている外国人の在留期間の上限は、五年に延長する。現在は一時出国前に必要な再入国の許可申請をなくすなど手続きの簡素化も実施する。
2008/03/27, 日本経済新聞
外国人介護士の受け入れに向けた準備を進める企業が相次いでいる。受け入れを盛り込んだフィリピンなどとの経済連携協定(EPA)は発効が足踏み状態だが、介護現場の人手不足を補うために先手を打とうと各社は躍起だ。
短期滞在で「教習」
▼介護施設運営などのリエイ(千葉県浦安市)は二〇〇八年一月、日本の介護を学んでもらうためにタイの二十歳代の女性二人を招いた。
二人は介護士の養成などを手がけるリエイのタイ現地法人社員。三カ月の短期滞在の間に「教習生」として日本語や日本での介護の仕方、マナーなどを学んでいる。
来日当初入浴などの文化の違いや気候の寒さにとまどうことも多かったが、次第に慣れてきたようだ。今では老人ホームなどの施設に見学に出かけると、利用者と笑顔で交流しているという。守屋忠取締役人材開発部長は「受け入れる施設側も学ぶことが多い」と利点を説明する。
日本はフィリピン、インドネシアと署名したEPAで、それぞれの国から二年間で看護師四百人、介護士六百人ずつの受け入れを盛り込んだ。タイとも受け入れについて協議を進めている。介護各社はこうした動きをにらみ、現地とのパイプ作りや日本の施設に受け入れる態勢の整備を始めている。
不動産コンサルティングのゼクス子会社で有料老人ホーム運営のゼクスコミュニティ(東京・千代田)は〇六年秋、フィリピンから語学を学ぶ就学生を受け入れた。アルバイトが認められる一日四時間以内で、介護施設で実際に働いてもらった。一年半の滞在期間中に日本語能力試験二級を取得。三月末にいったん帰国してEPA発効後に備える。
来日後の日本での生活や資格取得の支援をする団体を立ち上げた企業もある。
医療介護人材サービスのウイングメディカル(東京・港)は〇七年九月、「日本・フィリピン友好促進センター」を設立した。ヘルパー二級など資格の取得を支援するほか、生活上の相談に乗る。当面は在日フィリピン人を対象とし、EPA発効後はフィリピンから来日した人たちにも対応する予定だ。
EPA発効に時間
▼厚生労働省の調査によると、〇八年二月の介護を含む社会福祉専門職の有効求人倍率は一・八七倍。全職業の一・〇倍を大きく上回り、人手不足が鮮明だ。
フィリピンとインドネシアからの介護士受け入れは〇八年中にも実現する予定だったが、フィリピンや日本の国会でのEPAの承認が遅れているためにまだ発効のメドがたたない状況。さらに、来日後も四年以内に介護福祉士の国家試験に合格しないと帰国しなければならず、当初は厚生労働省所管の社団法人国際厚生事業団が研修先や就労先を決めるなど規制が厳しい。
民間の介護事業者が自分たちで外国人介護士を選んで育成、就労してもらえるようになるには、まだ長い時間がかかりそうだ。それでもいち早く各社が受け入れ環境を整える背景には、国内ではすでに十分な人材を集められない現状があるためだ。
厚労省の推計によると、一四年には〇四年の実績と比べてさらに四十万―六十万人の介護職員が必要で、事業者は一刻も早く海外の優秀な人材を受け入れたい考えだ。
一方で、海外からの売り込みも始まっている。タイの病院グループが〇七年七月に来日。タイ国政府貿易センター大阪などの仲介で名古屋、神戸、広島の三カ所で約十の介護事業者と懇談した。ピティナン・サマーンウォラウォン副所長は「タイは『ほほ笑みの国』として知られ、奉仕の精神が介護の現場に生かせる」と話す。敬老の精神などの共通点もあると強調する。
インドネシア大使館によると、インドネシアからもこの三年で三回、病院関係者らが日本を訪問しているという。
◇ ◇
日本で外国人介護士が定着するためには、どのような課題があるのだろうか。
在日フィリピン人介護士協会の大石ペニャフランシア副会長は「お互いに相手を受け入れる気持ちを持つことが大切」と説く。すでに多くの外国人介護士が働いているスウェーデンの介護事情に詳しい西下彰俊東京経済大教授によると、同国はしっかりとした語学習得プログラムを国が用意し、入国後は自国民と同等の給与と権利を与えていることが成功のカギとなっているようだ。「『一緒に国を支える一員』としての認識を持つことが必要ではないか」と西下教授は指摘する。
厚労省も受け入れにあたっては「日本人と同等の報酬を支給する」ことを義務づけている。「安価な労働力」と考えて採用すれば長続きせず、長期的には日本にとってもマイナスになる。
地元自治体の支援も不可欠だ。横浜市はいち早く〇八年度の予算で、外国人介護士を受け入れる施設への助成と外国人介護士本人を支援するための費用を計上した。今後は自治体のこうした動きも活発になりそうだ。
2008/03/31, 日本経済新聞
過去三年間に外国人留学生を卒業後にフルタイムの社員として採用した実績がある企業が九・六%だったことが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査でわかった。従業員三百人以上の企業では三六・三%と三社に一社が採用した。
採用の理由は「国籍に関係なく優秀な人材を確保」との答えが五二・二%と最も多かった。次いで「職務上の外国語の必要性」(三八・八%)や「事業の国際化のため」(三二・四%)となった。グローバル化に対応するため留学生を採用する企業も多い。一方で留学生の採用実績のない企業に理由を聞いたところ「受け入れ態勢が整っていない」「外国人の採用自体に消極的」との回答がともに四割強あった。
業種別の実績を見ると情報通信産業が二六・五%と突出。IT(情報技術)に強いといわれるインド人の採用が盛んなことなどが影響していそうだ。調査は全国の三千二百四十四社から回答を得た。
2008/04/04, 日本経済新聞
外国人研修・技能実習制度で来日した二十二歳から三十一歳の中国人女性三人が九日、熊本県阿蘇市の二つの農場で不当な労働を強いられたとして、農場側と受け入れ窓口の県国際農業交流協会、制度を支援する国際研修協力機構(東京)に対し、未払い賃金や慰謝料など計約千九百五十万円の支払いを求める訴えを熊本地裁に起こした。
訴状によると、三人は、二〇〇六年四月にトマト栽培を学ぶために来日。ところが規定の研修は一部を受けただけで、イチゴ栽培や整地などの仕事もさせられ、研修中は禁止されている残業も強制された。約四百円の時給でほぼ休みなく働かされ、別の農場に派遣されることもあった。
2008/04/09, 日本経済新聞
ヤマハ発動機は外国人労働者の日本語教育を充実させる。産業機械を生産するIMカンパニー早出工場(浜松市)の日系ブラジル人を中心とした派遣社員が対象で、実践に合わせたカリキュラムを充実させて取り組む。日常の生活場面を通して日本語を教えて、工場内でのコミュニケーションを活発にし、品質の向上にも役立てる狙いだ。
同工場の外国人派遣社員は現在約百人。レベルを上・中・初級の三段階に分けて実施している。全体の学習として、今月初め、浜松市消防本部の職員を招き、消防車や救急車の呼び方など実践形式で日本語を教えた。
県内では先月、ブラジル国籍の男性が子供を火事で死なせる事故が発生した。同工場では電話で一一九番にかけるという想定で、電話にでた職員の質問に発生場所や状況などを説明させた。参加した十一人は日本語レベルによって受け答えに差はあったが、緊急時にどう対処すればよいのか理解を得た様子。二十三日には日本文化という切り口でも学んでもらう。
同工場での日本語教室は昨春から終業後に実施してきた。今年はカリキュラムをより実践に役立つように見直して再スタートした。講師は昨年と同様、浜松国際交流協会(HICE)が派遣。同協会が実施した企業日本語カリキュラム開発検討委員会に、IMカンパニー事業推進部の石岡修部長が参加し、企業内で多く使われる言葉を調べて取り入れる。
浜松市には約一万八千人のブラジル人をはじめ外国人登録者数が全人口の約四%にあたる三万三千人と、全国有数の外国人集中地域。早出工場は、プリント基板に電子部品を自動装着する表面実装機などを生産している。二輪車組み立てのように一人の作業が細分化されていないうえ、特注品の比率が八割を占めており、作業レベルを上げるために毎日のコミュニケーションが重要な役割を持つ。
2008/04/15, 日本経済新聞
ローソンは二〇〇九年春に採用する新卒者のうち三分の一に当たる三十―五十人を外国人とする方針を決めた。今春に比べて三倍以上に増やす。人手不足に悩む国内店舗では外国人パート・アルバイトの活用が広がるほか、海外での出店も増えており、店舗の運営指導やサービス開発には外国人社員の参画が不可欠と判断した。
同社は来春、百十―百三十人の新卒採用を計画している。うち三十―五十人を中国を中心にアジア諸国から日本に留学している外国人にする。フランチャイズチェーン(FC)店を含めた「ローソン」店舗向けの運営指導や商品・サービスの開発に当たらせる。今後の海外で出店拡大をにらみ、海外事業向け要員の育成にもつなげる方針。
ローソンは今年四月入社の新卒者から外国人正社員の採用を本格化。中国人九人、ベトナム人一人の計十人を採用した。新卒者に占める外国人の割合は約八%だったが、来春はこの比率を二七―三八%に高める。
2008/04/22, 日本経済新聞
福田康夫首相は21日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と留学生の受け入れ拡大などで合意した。今後3年間で新たに日韓の大学生計1500人が留学できる制度を新設する。日本企業の間では外国人の採用意欲が高まりつつあり、留学生への期待が広がりそうだ。
日本で学ぶ外国人の在留資格は大学などで学ぶ「留学生」と高等学校や語学学校などに通う「就学生」に分かれる。法務省の統計によると、両者の合計である外国人の学生数は2006年末時点で16万8510人。このうち、日本での就職のために在留資格の変更が認められた人数は8272人で、前の年と比べて40.7%増えた。構成比の内訳は中国が72.5%、韓国が11.4%などとなっている。
外国人学生が就職する職種別で最も多いのが翻訳や通訳で全体の約3割を占める。情報処理と販売・営業はそれぞれ1割。業種別では小売業やIT(情報技術)関連が目立ち、非製造業が7割以上だ。日本企業による製造拠点の海外移転や海外店舗の出店を背景に、現地採用の外国人従業員の指導のほか、通訳、現地情報の収集などに従事することが多い。
中古車買い取り・販売のガリバーインターナショナルは海外店の指導要員などに中国人やインド人の採用を積極化している。ローソンは今年10人だった外国人の新卒採用を来年は30―50人に増やし、日本に留学している外国人を採用する考えだ。観光関連でも外国人客に対応するため外国人学生を積極的に採用する企業が増えており、日本で就職する外国人学生の数は今後も増加が続くとみられる。
2008/04/27, 日本経済新聞
外務・法務両省は日本で長期滞在を希望する外国人の在留資格の審査に際し、一定程度の日本語能力を持つ場合には在留期間を現在の最長三年間から五年間に延長する方向で検討に入った。高村正彦外相が一日、記者団に明らかにした。国際線の客室乗務員や通訳など日本語を活用する職業に就く外国人も、規制を緩和する方針だ。
2008/05/02, 日本経済新聞
インドネシア人の看護師や介護福祉士の受け入れを柱とした日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)が十六日午前の参院本会議で自民、民主、公明各党などの賛成多数で承認された。衆院はすでに承認しており、七月上旬にも発効の見通し。EPAを活用して介護・看護分野の外国人労働者を受け入れる初めての事例となる。
協定によると今後二年間にインドネシアで一定の実務経験がある看護師四百人と介護福祉士六百人を受け入れる。介護福祉士は四年、看護師は三年を上限とした「特定活動」のビザを発給する。
来日した看護師らは日本語などの研修を半年間受けた後、受け入れ先の病院や老人ホームなどで看護師の助手や介護職員として勤務することになる。給料は日本人と同水準とし、ビザの有効期間中に日本の国家試験で資格を得られなければ帰国しなければならない。
協定は昨年八月に締結され、四月十七日に衆院で承認された。インドネシアは派遣に向けた準備を加速するが、看護師らの処遇を巡る両国の調整は遅れており日本での受け入れ時期は当初予定した七月からずれ込む可能性もある。
2008/05/16, 日本経済新聞
人口の減少と少子高齢化により国内の働き手が減るなかで、外国人の受け入れを増やす必要があるという声が増えている。政府や自民党も具体的な議論を始めた。
介護、看護など人手不足感が強い分野では、外国人の助けを借りざるを得ない。だが国内雇用への悪影響や日本社会との摩擦を避けるとともに、来日した外国人を失望させないことが肝心。受け入れる分野・人数や、教育を含む支援とその財源負担などの問題をよく考え、受け入れの枠組みを早く決めるべきだ。
介護、看護に不足感
いま社会問題になっているのが介護職員と看護師の不足だ。厚労省の推計では今年、看護師が三万七千人足りない。介護職員は二〇〇四年からの十年間で新たに四十万―六十万人必要だという。約二百万人の介護職員のうち一年で二〇%強が離職している現実も考えれば、実際の人員不足はもっと深刻であろう。
ほかに農業、森林保全や水産加工、機械加工などでも受け入れたいという声が自民党や経済界にある。
長期的には、人口が減るうえ、高齢化が進み、政府推計によれば、三〇年に六十五歳以上が総人口の三二%に達する。様々な分野で働き手が足りなくなるとみられる。
いまの出入国管理法は研究、技術、留学など二十七種類の在留資格を認めている。高度な専門職を中心とし、国内の雇用への影響を考えて単純労働は認めない建前である。
このため外国人の介護職員は原則受け入れていない。看護師は日本の資格を取れば働くのを認めるが、七年後には母国に帰す。二国間の経済連携協定で決めた看護師、介護福祉士の受け入れも、日本看護協会などの慎重論もあって、少数のうえ、条件が厳しい。インドネシアからの看護師は「母国の資格を持ち二年以上の経験があり、来日後三年以内に日本の資格も取る」必要がある。
この人材不足の問題を考えるうえでの前提は国内人材の活用を優先することだ。家庭に入った看護師ら女性の再就職支援、高齢者の雇用促進、フリーターの再訓練などを推し進めるべきだ。介護職員不足の一因が給料の低さにあるなら、介護保険制度を見直し処遇を改善する必要がある。少子化対策を通じ日本の子どもを増やすことも求められる。
それらの対策を実施しても人手不足が明らかな分野で、人数を管理しながら外国人を受け入れるのが妥当ではなかろうか。当面は介護、看護の分野で資格取得支援を含む受け入れの体制をつくることが急がれる。
それがアリの一穴となってほかの職場でも日本人の雇用が脅かされる、といった労働組合などの主張は、介護、看護現場の厳しい現状を無視していると言わざるを得ない。
そのほかの分野は個別に考えるしかない。競争力の回復が困難な労働集約的な産業で、外国人を低賃金で雇い事業を維持するようだと産業構造の高度化を妨げかねない。半面、食料自給率の向上が課題の農業では、担い手の高齢化もあり、外国人の協力は必要かもしれない。
もう一つ大切なのは外国人の受け入れ方である。政府は高度専門職の例外としてブラジルなどから日系人を多数、受け入れたが、日本語教育や職業訓練を怠ったため、職に就けず犯罪に走る若者も相次いだ。外国人の多い地方自治体が今、そのツケを払っている。日本語教育や職業訓練の充実は大事だ。その財源対策も考えておく必要がある。
環境整えて良い人を
また「研修・技能実習」の名目で中国などの若者を極端な低賃金で単純労働に使い、海外から批判されている問題も無視できない。単純労働を部分的に受け入れるなら最低賃金を守るなどきちんと対応すべきだ。
政府の経済財政諮問会議は高度人材(いま在留資格上は約十五万人)を倍増させるための具体策を検討中だ。介護職員も高度人材とみなして受け入れる方針。それは良いとしても、高度人材の美名の下に介護職員を受け入れて、低賃金労働を強いるような結果となっては、国際的に非難されるだけである。
世界では今、人材の取り合いになっている。待遇が悪ければ良い人は来ない。良い人材をほかの国に取られないためにも外国人に評価される環境の整備を急ぎたい。その点で短期の出稼ぎとしてでなく永住を前提に受け入れることも検討課題だ。
一方、日本企業が外国人を差別的に扱うため優秀な人が就職したがらないという問題もある。より長期の視点からは、外国人を受け入れて経済大国を維持するのか、それとも豊かで中規模の国を目指すかという選択も必要だ。外国人材の受け入れに関して議論すべき事柄は実に多い。
2008/05/19, 日本経済新聞
インドネシアと日本両政府は十九日、ジャカルタで経済連携協定(EPA)に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士の受け入れで最終合意した。七月から今年最大五百人が派遣される。日本政府による外国人労働者の本格的な受け入れは初めて。国内外で『人材開国』への第一歩との期待も高まっているが、様々な壁も立ちはだかっているようだ。
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「日本は豊かな国。ぜひ行きたい」。インドネシアの労働・移住省は二十七日から三日間限定で日本派遣の看護師・介護福祉士の募集を行ったが、初日から千人以上の希望者が殺到した。
応募者の一人、バンドン在住のリナさん(25)。看護師になって五年だが、月給は二百万ルピア(約二万二千円)に満たない。「日本に行けば、この十倍は稼げる」と期待を込める。両政府の交わした覚書には賃金の具体的な記載はないが、日本人と同等とあり、二十万円以上の給与は保証されているとのうわさが独り歩きしている。
両政府は今年、インドネシア人看護師二百人、介護福祉士三百人、二年間で最大一千人を日本の医療機関や福祉施設などに受け入れることで合意した。インドネシア側が選抜試験を実施、七月末には第一陣を日本に送り込む。
その後半年間、日本語などの研修を実施。看護師は三年間、介護福祉士は四年間それぞれ勤務後に日本の国家資格を受験。合格すれば、半永久的に看護師・介護福祉士として日本で働くことが可能となる。これまで外国人労働者の受け入れに消極的だった日本政府にとっては人材開国につながる画期的な事業だ。
しかし、開国への道のりは容易ではない。インドネシアは比較的、日本語学習熱の高い国だが、日本語に堪能な看護師はほとんどいない。リナさんも日本語を半年間受講したことはあるが、「日本語は複雑」と片言しか話せない。
肝心の医療レベルも問題だ。インドネシアは東南アジアでも医療水準は決して高くない。インドネシア人の富裕層や在留邦人はシンガポールやマレーシア、タイの病院で健康診断や治療を受けるケースが多い。シンガポールの有名病院の入院患者の半数以上がインドネシア系華人。年間五百億円以上の医療収入が海外に流出しているといわれている。
インドネシアは熱帯地域の途上国のため、感染症の患者が多く、この分野での専門医や看護師の知識や経験は豊富。だが日本では循環器系疾患の患者が多く、インドネシアの看護師らが日本の医療現場のニーズに対応するのは簡単ではない。日本語の壁もあり、三年間の勤務で日本の国家資格を取得するのは至難の業とみる向きもある。
■ ■
インドネシア側は資格条件の緩和を求めているが、日本側から前向きな回答はないという。三、四年後に何人のインドネシア人が難関の国家試験を突破できるのか。日本が真の人材開国となるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
2008/05/29, 日本経済新聞
法務省は三日、永住や留学、研修などの目的で日本に滞在している外国人登録者数が二〇〇七年末現在で二百十五万二千九百七十三人(前年比三・三%増)と過去最多を更新したと発表した。日本の総人口に占める割合は約一・七%。十年前と比べると約一・五倍に増えた。
国・地域別では、中国が約六十万七千人で、統計を取り始めた一九五九年以降で初のトップ。登録者全体の二八・二%を占めた。韓国・朝鮮は約五十九万三千人で、二位に後退。次いでブラジル。フィリピン、ペルーと続いた。
都道府県別では、最も多いのが東京都で約三十八万二千人、全国の一七・八%を占めた。二番目に多かったのは愛知県で、初めて大阪府を抜いた。
また在留資格別では、在日韓国・朝鮮人ら特別永住者は四十三万二百二十九人で、日本人を配偶者に持つ人などが対象の一般永住者(四十三万九千七百五十七人)を初めて下回った。
2008/06/03, 日本経済新聞
厚生労働省は「外国人労働者問題啓発月間」の今月、個別企業などを対象に問題の周知・啓発、指導などを強化する。外国人雇用状況届け出制度を厳格に履行するよう求めるほか、外国人指針に基づく雇用管理改善指導なども行い、外国人労働者の労働条件や安全衛生を確保する。留学生など専門的・技術的分野での外国人の就業も促す。
「外国人雇用はルールを守って適正に!」を標語として掲げる。届け出制度の適切な実施などでは業界団体の協力も求める。
2008/06/04, 日経MJ(流通新聞)
厚生労働省が検討している外国人研修・技能実習制度の見直し案が明らかになった。法外な手数料を徴収する仲介業者(ブローカー)を排除するため、実習生の受け入れ団体に許可制を導入。実習の実効性を確保するため、一企業内の実習生の比率も規制する。十三日の「研修・技能実習制度研究会」でまとめる最終報告書に盛り込む。法務省と調整したうえで、出入国管理法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針だ。
外国人研修・技能実習制度は主に発展途上国の労働者が働きながら技能を身につける制度。期間は三年間で、最初の一年は座学などの研修期間、残り二年は現場での実習期間となっている。
現在は業界団体などが受け入れ窓口となって日本企業に人材をあっせんしている。ただ、約千百ある受け入れ団体の中には低賃金労働者の提供をうたい文句に、日本企業から高額の手数料を取るブローカーが混在し、トラブルが多発している。
厚労省は今後、業界団体としての活動実態などを調査し、受け入れ団体として適切かどうかを判断する制度を導入する方針だ。さらに手数料を透明化することや研修や技能実習を支援するなどの要件を設け、手数料を取るだけのブローカーには許可を与えない。
実習生の比率も制限する。今は従業員五十人以下の企業で研修生の受け入れ人数は三人までといった受け入れ人数の制限がある。ただ二年目以降の実習生になると制限はなくなり、社員の大半が実習生という企業もある。技能の習得が困難になるため、日本人従業員に対する実習生の比率を一定以下にするといった基準をつくる方針だ。
一方、多くの実習生が受検する金属加工といった技能検定の合格実績が高い企業には、通常より多い実習生の受け入れを認める方針も打ち出した。企業の技能教育へのやる気を促し、実習の効果を高める狙いだ。
外国人研修・技能実習制度を巡っては、最低賃金や労働基準法などが適用されない一年目の研修期間に低賃金など劣悪な労働環境を強いられるケースが多く、国際的に批判を浴びていた。
厚労省は二〇〇六年に研究会を立ち上げて検討を開始。昨年の中間報告では研修を廃止し、法規制のある三年間の実習に一本化する方針を打ち出しており、最終報告にも盛り込む。
自民党内では長勢甚遠元法相の私案を基に、現在の技能実習制度を廃止し三年間に限定した短期就労制度をつくることを検討している。経済産業省も昨年、特に優秀な技能実習修了生には日本での就労ビザを認めることを検討すべきだとする独自の案を発表している。
2008/06/13, 日本経済新聞
日本、インドネシア両政府の経済連携協定(EPA)に基づく初めての看護師・介護福祉士の受け入れ事業で、日本側の仲介機関・国際厚生事業団は二十一日、ジャカルタでの面接を終了、審査の結果三百五人を受け入れる見通しになった。現地での募集期間が短かったこともあり、予定していた最大受け入れ枠(五百人)を約四割下回った。
初年度の日本側の受け入れ数は看護師が百七十四人、介護福祉士百三十一人。それぞれの受け入れ枠は二百人、三百人で介護福祉士の応募者が日本側の需要を大幅に割り込んだ。今後は日本側の受け入れ機関と調整したうえで七月下旬以降に順次日本に派遣される。
受け入れ枠を大幅に下回ったことについて日本政府は(1)国会承認が五月下旬にずれ込んだため、告知・募集期間が十分ではなかった(2)インドネシアには介護福祉士に相当する資格がないため、初年度は募集を看護師に限定した――などとしている。来年以降は現地で介護福祉士の研修を受けたインドネシア人も応募対象となる。
インドネシアでは毎年約三万二千人が看護師の資格を取得するが、病院が少ないため、就職率は三割を下回り、供給過剰の状態。一方、日本は慢性的な看護師・介護福祉士不足に悩んでいる。同事業団は「来年は募集期間を長くし、面接も全国各地で実施し、募集を増やしたい」としている。
2008/06/22, 日本経済新聞
転職サイト運営のエン・ジャパンは八月、インド人技術者の採用支援事業を始める。インドで実績のある人材教育会社と提携、日本国内の製造業者に技術者を紹介する。日本では少子化や学生の理数系離れが進み、技術者不足が加速している。理系学生が多いインド人材を活用し、企業の技術者需要に対応する。
インドと日本の間での人材派遣、教育・研修などを手がけるソフトブリッジソリューションズジャパン(東京・千代田、プラシャント・ジェイン社長)と共同で実施する。ソフトブリッジがインド国内での技術者の発掘や教育で蓄積したネットワークを活用、五年目で年間二百人の契約成立を目指す。
企業からの機械系や組み込み系技術者の求人を受けて、エン・ジャパンとソフトブリッジが候補者リストを作成。その中から書類選考とインドでの面接により、企業が採用者を決める仕組み。その後にソフトブリッジの拠点があるインド・プネ市で技術者に必要な技術や日本語などについて約四カ月の集中講習を施す。ビザ発行など就業に必要な手続きも代行する。
エン・ジャパンとソフトブリッジが企業から得る紹介手数料は年収の三〇%。教育・研修料金、ビザの取得費などを含めると、一人あたりの採用費は二百万―三百万円程度になるという。両社は共同で五年後に十億円の売上高を目指す。
インドでは毎年、日本の約五倍にあたる五十万人の理系学生が卒業し、製造関係の技術者も約二十五万人いるとされる。ソフトブリッジは昨年夏から約百三十人の技術者を日本企業に派遣した。
2008/07/11, 日本経済新聞
インドネシア保健省は二十四日、日本との経済連携協定(EPA)に基づく初めての看護師・介護福祉士の派遣者数が当初募集枠の半分以下の二百二十四人にとどまる見通しを示した。日本の受け入れ先との調整の結果、日本側の求める能力や技量に達していなかったため。派遣時期は当初の七月末から八月初旬にずれ込む。
両政府関係者は六月下旬に面接の結果、看護師百七十四人、介護福祉士百三十一人の受け入れを内定した。しかし、日本の医療機関など受け入れ先と調整した結果、看護師は百十人と大幅に減少、介護福祉士は百十四人となった。
インドネシア保健省は「日本の医療機関の受け入れ基準が非常に高く、実際の派遣者数が内定者を大幅に下回る結果になった」としている。日本はインドネシア側からこの二年間で看護師・介護福祉士ら最大一千人を受け入れる方針。しかし、インドネシアの医療レベルはアジア諸国の中でも低いとされ、有能な人材確保は難航しそうだ。
2008/07/25, 日本経済新聞
経済財政諮問会議の民間議員は二〇〇八年五月、専門技術を持った外国人の受け入れ拡大を提言した。現状で約十五万人いる高度な専門知識やスキルを持つ外国人を、一五年に二倍の三十万人にすることを目標に関係省庁に行動計画の策定を求めた。提言では留学生が国内で就職する場合のビザ発給要件の緩和や、看護師・介護師といった国家資格が必要な職種での在留資格を新設するよう提案した。
労働力不足が背景
こうした提言の背景には、少子高齢化の急速な進展によって労働力人口が減少し、経済成長の制約要因になるといった危機意識がある。高度な専門知識やスキルを持った外国人を積極的に受け入れることによって、こうした制約要因の影響を緩和できるとの考えがある。
日本政府の外国人労働者に関する方針は、「専門・技術分野は積極的に受け入れるが、単純労働分野は制限する」というものだった。だが、一九八〇年代後半の深刻な労働力不足に直面して、方針を大幅に修正した。象徴的な事例としては、日系人なら職種の制限なしに国内での就労を認めたことである。
在留資格16職種に
単純労働分野に関しても、発展途上国への技術・技能移転を目的に外国人研修制度が導入された。一九九三年には技能実習制度に改められ、規制が緩和された。現在の出入国管理法では、技術など十六職種の在留資格が認められている。
合法的に日本に入国し就労している外国人の数は一九九六年に約三十七万人だった。二〇〇六年には約七十六万人に急増している。専門的・技術的分野で高度なスキルや技術を持った外国人も同じく約十万人から十八万人に増加している。
高度なスキルや技術を持った外国人に関しては、技術分野の六割強が情報処理、人文知識・国際業務分野の約六割が教育であり、開発・設計や国際・貿易業務等での活用は、それほど進んでいない。
2008/08/20, 日経産業新聞