

「優しさ」が富を支える
「母国に残した家族をフヨウ(扶養)に入れられないでしょうか」「会社がネンマツチョウセイ(年末調整)してくれない」
愛知県豊橋市で二月中旬に開かれたポルトガル語の納税相談会。市内に住む在日ブラジル人から確定申告書の書き方や納税方法などの質問が相次いだ。同相談会の参加者は二百人。開始から四年で五倍に増えた。
ブラジル人4割
発足当初は還付金目的の相談が主で「行けばお金がもらえる」とのうわさが出た。だが今では「マイホームを買った在日ブラジル人が、固定資産税や住宅ローン減税について相談してくる」(国際交流協会常務理事の佐藤信次=57)。
トヨタ自動車のおひざ元、愛知県豊田市にある保見団地。約九千人の住人の四割が自動車関連工場などに勤めるブラジル人。市は、ブラジル人店員が働くショッピングセンターの誘致を後押し。救急車が立ち往生するほどの違法駐車解消に向け五千万円を投じ四百台分の駐車場を確保した。同市は外国人の定住支援に年二億円を費やす。
「なぜそこまで」。在日ブラジル人の犯罪やトラブルに不満を持つ市民からは、こんな声もあがる。だが豊田市長の鈴木公平(68)は「外国人に住みよいまちづくりは最優先」と迷いがない。ポルトガル語で食事のメニューを表示するよう市内のレストランに要請することすら検討している。
豊田市の今年度の法人市民税収は、前年度比六割増の四百三十億円。個人市民税も二割近く増え三百十七億円の見通し。国からの地方交付税交付金も原則受け取っておらず全国でも指折りの豊かな自治体だ。異質な文化や慣習との摩擦はある。が、それを避けようと閉じた社会になればグローバルな競争から脱落。企業も市も、そして結局は住民の生活も貧しくなる。豊田市の「優しさ」はグローバル化と折り合うなかで生まれた。
国と連携に課題
もっとも国の外国人受け入れ策はまだ腰が定まらない。受け入れを広げるのか。広げるならどういう基準でどこまでか。インフラはどう整えるのか。企業や自治体が動いてもすべてが解決できるわけではない。
ログハウス建築のフリージアホーム(東京・千代田)では約六十人のロシア人大工が働く。だが「移民の子孫である日系ブラジル人と違い日本に血縁関係のない外国人は定住ビザが下りにくい」と採用担当者。ロシア中部出身の男性(46)は「家族を日本に呼ぶのが夢だったが定住はあきらめざるを得ない」とうつむく。
「ブラジル人妊婦が通りで迷っている」。昨夏、群馬県大泉町役場にこんな通報があった。所持金はゼロ。健康保険にも未加入。同町は「滞在は困難」と判断し帰国を促すことにしたが、出産費用の手当てなど問題が山積。省庁に問い合わせると「医療費は厚生労働省の担当ですが、送還手続きは法務省か外務省に」などたらい回しが相次ぎ、女性の帰国に一カ月半かかった。
日本に在留する外国人は二〇〇五年に二百万人を超えた。急増する中国は五十万人。移民の子孫が多く定住傾向が強いブラジルの三十万人など、新興国からの来訪者たちが上位を占める。
在留外国人の多い十八市町は昨年末、住民登録や社会保険など外国人に関係する手続きを一貫して手掛ける「外国人庁」の創設を国に要請した。「点」から「面」へ。新興国との接触の深化は、国の行政インフラにも未来と向き合うよう求め始めている。=敬称略
2007/05/08, 日本経済新聞
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