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  3. 外国人社員の給与計算

外国人雇用の基礎知識

1.給与計算の事務

1.支給額と控除額の差引計算

 給与計算の業務は、役員や従業員に給与を支払うときに、労働条件通知書などにより決定された給与から、法律に定めがある健康保険料や厚生年金保険料、所得税などの控除額を差し引きする一連の事務になります。

 支給額には労働条件通知書のほか、企業の賃金規程の手当などを含み、控除額には法律の定めのほか、社内積立などの任意のものを含みます。

2.給与明細書と賃金台帳

 給与明細書は給与計算結果の明細書です。その明細書には大きく区分すると“勤怠”“支給”“控除”“差引支給額”の情報が記載されています。

 これらの項目は“賃金台帳”として保管します。外国人社員の信頼を得るためや企業のコンプライアンスのためにも、労働基準法が規定する項目(労働日数や労働時間数、時間外労働時間数など)を網羅していなければなりません。

3.勤怠の管理

 企業は従業員の労働時間を適正に把握し、かつ管理する責務を負っています。管理監督者などの適用除外者を除き、給与計算にも適正な労働時間を反映させなければなりません。

 一般的に日本人の場合、多少の残業時間はいとわない傾向にありますが、外国人を雇用する場合はそういった常識は通用しないことも多く、適切な勤怠管理体制を整える必要があります。

4.給与計算と諸法令

 給与計算を正確に行うためには、労働基準法、社会保険・労働保険に関する各種法律、所得税法を正しく理解しなければなりません。一般に“賃金”“報酬”“給与”などと呼び方が異なりますが、これは各種法律による呼び方があるためであり、解釈も若干異なります。

 このように給与計算業務にはさまざまな法律が関わってきますので、事務担当者は、外国人社員からの質問にも答えられるように理解しておくことが必要です。

2.外国人社員への説明・確認事項

1.給与の合意

 給与の支給額は、募集企業側が金額を提示して応募者が提示額に承諾することにより決定されますが、控除額についてまで合意することはほとんどなく、日本人の場合は「控除されて当然」「しょうがない」と考えて、黙示の合意が成り立っているかと思います。

 外国人の場合は、合意された給与の支給額から何が控除されるかを理解していないこともあり、その誤解から企業へ不信感を抱くこともあります。

2.グロスとネット

 日本の給与支払は、総支給額と手取額が大きく異なります。給与の支給額から社会保険料、所得税や住民税などが控除されるためです。

 外国人の場合、給与明細を見てはじめて給与からさまざまな税金や保険料を控除されるのを知ることもあります。事前にグロス(総支給額)がいくらかネット(手取額)がいくらになるかを給与計算のシミュレーションをして説明する必要があります。

3.ローカル社員とエクスパッツ

 外国人を雇用する形態は、大きく分けて日本で現地採用される者(ローカル社員)、もしくは海外の本店・支店や関係会社などに所属している外国人が転勤などで日本に出向してくる者(エクスパッツ)に区分できます。

 給与の計算は、ローカル社員とエクスパッツでその取扱いが異なる場合があります。居住者区分、保険・年金制度、年末調整などをそれぞれ確認しなければなりません。

4.居住者・非居住者の判定

 外国人社員の所得税を計算する場合、その外国人が“居住者”となるか“非居住者”となるかを判定しなければなりません。この区分の違いにより給与計算上の所得税の計算方法が異なります。

 現地採用のローカル社員の場合は“居住者”として扱うことがほとんどですが、エクスパッツの場合はさまざまケースが考えられますので注意が必要です。

3.年間の給与計算フロー

1.毎月の計算と年間の計算

 給与計算は毎月の給与計算のほかに、毎年決まった時期に行われる事務があります。毎年6月から7月の時期と年末年始の時期の年2回は、特に事務および計算手続きが集中します。

 毎年6月から7月の時期は、労働(労災・雇用)保険の“年度更新”の事務があります。年末年始の時期には所得税の年末調整を行い、年明けの年始に年末調整の計算結果を税務署や市区町村へ提出します。

2.労働保険の年度更新

 毎年6月から7月にかけては、労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の“年度更新”の事務手続きがあります。労働保険料は1年に1回、前年度の賃金総額から算出されます。

 エクスパッツなどの雇用保険の対象除外となる外国人がいる場合は、賃金総額に対象除外となる従業員の給与額は含めません。

3. 給与計算事務の決算である年末調整

 給与から控除される所得税の源泉徴収税額は、あくまでも“源泉徴収税額表”に基づいて控除された暫定的な金額です。1年間の年収を想定して算出された概算であり、正確な金額ではないため、1年間の給与支給額が確定した時点で正確な所得税を算出します。その過不足計算の調整を年末調整といい、給与計算事務の決算といえます。

 1年の途中で帰国して“非居住者”となる外国人の場合は、出国までに確定した給与支給額に基づいて年末調整を行います。なお、計算方法は年末に行う調整と同様です。

4.外国人に対する住民税

 一般的に市町村民税と道府県民税(東京都の場合、特別区民税と都民税)を合わせて住民税といいます。所得税と同様に“居住者”と“非居住者”で取り扱いが異なります。

 非居住者は原則として非課税ですが、居住者はその年の1月1日時点の住所の有無や居住期間などにより課税対象が判断されます。なお、前年の所得を基に計算される住民税は、来日1年目の外国人には課税されません。

4. エクスパッツの取扱い

1.源泉所得税と住民税

 海外の本支店や関係会社などに所属している従業員が、日本に出向や派遣などにより滞在する場合、一般的にエクスパッツと呼ばれ「企業内転勤」ビザを有しています。

 企業側の源泉所得税や社会保険料などの負担額、滞在期間がエクスパッツにより異なるため、住民税や課税区分、課税対象額なども変更されます。それぞれの日本滞在における給与などの処遇を正しく確認し、給与計算事務をおこなわなければなりません。

2.グロスアップ計算

 エクスパッツは、企業側が税金や社会保険料相当額を手当として負担するケースがあります。これらは経済的利益として毎月の源泉所得税や社会保険料などの対象になります。

 経済的利益分の企業負担分を総支給額に加えたうえで、源泉所得税や社会保険料などを計算する必要があります。しかし、これらを加算することによりさらに源泉所得税や社会保険料などの対象額が増えます。したがって総支給額と源泉所得税や社会保険料などが整合性を保つまで反復計算をする必要があります。

3.健康保険と厚生年金保険

 健康保険と厚生年金保険が適用されるか否かの判断は、日本企業からの給与支払いの有無が判断基準となります。日本企業から給与が支払われずに海外の企業から全額支払いを受けている場合は、給与計算の業務はありません。  

 エクスパッツの派遣もくしは出向期間が5年以内で、日本と社会保障協定が締結されている場合は、日本に勤務することが一時的なものとして、厚生年金保険への加入が免除されます。社会保障協定の内容は締結先国により異なりますので、健康保険も加入が免除される場合があります。

4.労災保険と雇用保険

 労災保険は日本企業に指揮命令を受けて給与を支払われる場合は、“使用従属関係”があるとして加入義務が発生します。しかし、従業員負担の保険料はないため給与計算の実務は変わりません。

 雇用保険は「外国において雇用関係が成立した後に日本国内の企業で勤務し、雇用終了後は帰国することが明らかな者」は適用除外とされ、エクスパッツはこれに該当していました。しかし、現在はそのような取扱いがなくなり、“雇用関係”の有無で個別に判断するとしています。

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