

「外国人研修制度」とは、18歳以上の外国人を民間の企業や諸団体が受入れて、日本の産業や職業上の技術、技能、知識の修得を支援し、母国の産業振興の担い手となる人の育成に協力しようとするものです。日本での在留資格は「研修」で1年以内の活動と定められており、「実務研修」と「非実務研修」の2つに分けられます。
「実務研修」とは実地において行う研修の事をいい、生産現場で実際に生産に従事しながら、又は実際に販売やサービス業務を行いながら技術、技能、知識を習得する活動です。一方、「非実務研修」は座学とも呼ばれ「実務研修」以外の研修のことをいい、具体的には研修の初期に行われる日本語研修、実務研修に必要な技術などの基礎原理、安全衛生教育、技術研修、試作品の作成、模擬販売などが該当します。
研修制度を活用する場合は「非実務研修」だけを行うこともできますし、「非実務研修」と「実務研修」をくみ合わせた研修を行うこともできます。ただし、「実務研修」を実施する場合には、原則として「実務研修」の時間を総研修時間の3分の2以下にしなければなりません。また、「実務研修」のみを行う研修制度は一般的には認められません。
これらの研修が終了した後には、職種にもよりますが技能実習制度を活用し、在留資格を「特定活動」に変更させた上で、技能実習生として2年以内の生産活動に従事してもらうことが可能となります。研修から技能実習に移行するには、研修終了後に研修成果等の評価を受け基準に達し、入国管理局から在留資格変更の許可を受ける必要があります。技能実習に移行できる職種は農業、漁業、建設業、食品製造業、繊維・衣服関係、機械・金属関係などの62職種114作業が具体的に定められていますが、移行後は労働者として扱われる点が「研修」とは大きく異なります。ただし、「研修」とこれに続く「技能実習」は、最長3年間の一定期間が経過したら帰国させることが制度の趣旨なので、例えどんなに研修生が気に入っても3年を超えて日本に滞在させることはできません。
このように、「研修」と「技能実習」は、外国人に日本の産業、職業上の技術、技能、知識を移転させ諸外国の人材育成に協力する点においては全く同じものですが、要件や内容によって違いがあります。大まかに言ってしまえば、「技能実習生」は労働者としての扱いであり、労働契約に基づき賃金が発生し休日・夜間労働なども労働法令の範囲内で行わせることができます。
一方、「研修生」は技能などの習得を目的とする研修生であり、労働者ではありません。そのため、賃金の支払は無く、代わりに日本での生活費などを賄うための研修手当てが支払われる事になります。また、研修生受入れ時に入国管理局に提出した研修計画に記載されていない時間外や休日の業務などを行わせることはできず、労働保険や社会保険などにも加入することはできません。
以下の表は研修生と技能実習生の処遇の違いをまとめたものです。両者の取り扱いを誤ると研修制度に係る不正行為を行ったことになり、外国人研修生を受入れた企業、それに研修生を派遣した送出し機関なども含め、処罰の対象となることもあるので注意が必要です。
「研 修」 |
「技能実習」 |
|
| 対象となる業務職種の範囲 | 入管法令の要件を満たす同一作業の単純反復でない業務 | 技能検定等の対象となる62職種114作業 |
| 修得技能水準の目標 | 技能検定基礎2級(1年研修の場合) | 技能検定3級(2年実習の場合) |
| 技能修得のための担保措置 | 研修計画を作成・履行する | 技能実習計画を作成・履行する |
| 該当する在留資格 | 在留資格「研修」 | 在留資格「特定活動」 |
労働者性の 有無 |
労働者性はなく、就労は認められない | 労働者として取扱われる |
| 時間外・休日従事の適否 | 時間外・休日研修は行えない | 時間外・休日労働は行える |
| 外国人に対する保護措置 | 入管法令に基づく保護を行う | 労働法令に基づく保護を行う |
| 処遇条件の明確化 | 研修時間、研修手当等の条件を定めた処遇通知書を交付する | 労働条件に関する雇用契約書又は労働条件通知書を交付する |
| 受入れ機関の生活保障措置 | 生活の実費として研修手当が支払われる | 労働の対価として賃金が支払われる |
| 傷害・疾病への保険措置 | 民間保険への加入が義務付けられている | 国の社会保険・労働保険が強制適用される |
外国人研修生を受入れる場合、現地で研修生となる人材を集め研修制度の説明などを行う「送出し機関」と、日本で研修生を受入れる「受入れ機関」の2つを定める必用があります。それぞれどのような機関を選択するかにより受入れ状況が異なり、通常は大きく2つに分かれます。それは、企業が単独で行う場合と、様々な団体が研修生を受入れその団体のメンバーが第2次受入れ機関として受入れる場合です。
(1)企業単独型研修の受入れの場合(企業が単独で行う研修生の受入れ)
海外の現地法人、合弁企業、または外国の取引先企業(一定期間の取引実績が必要)の常勤職員を研修生として受入れる日本の企業などが該当します。研修生の受入れは、 原則として、受入れ企業の常勤職員20名に付き、研修生1名の受入れが可能となり、受入れには次のいずれかに該当する必要があります。
① 送出し国の国または地方公共団体、あるいは、これらに準ずる機関の常勤の職員であり、かつ、
その機関から派遣される者
② 受入れ機関の合弁企業または現地法人の常勤の職員であり、かつ、その合弁企業または現地法人から派遣される者
③ 受入れ機関と引き続き1年以上の取引実績、または過去1年間に10億円以上の取引の実績を有する機関の常勤の職員であり、かつ、これらの機関から派遣される者
(2)団体監理型研修の受入れの場合(受入れ団体がそのメンバーである企業等と協力して行う研修生の受入れ)
日本の公的な援助・指導を受けた商工会議所・商工会、事業協同組合等の中小企業団体、公益法人などが受入れの責任を持ち、その指導・監督の下に研修生を受入れる会員・組合員企業などが該当し、事業協同組合等の中小企業団体が受入れた場合には、 原則として、受入れ企業の常勤職員が50名以下の場合には研修生3名の受入れが可能です。この場合には受入れのために次のいずれにも該当しなければなりません。
①現地国の国・地方公共団体からの推薦を受けた者
②日本で受ける研修と同種の業務に従事した経験がある者
このように両者ともに研修生を受入れることはできますが、どちらの方法を選ぶかにより研修生の受入れ人数が大きく異なります。前者の企業単独で受入れを行った場合には原則として、受入れ企業の常勤職員20名に付き研修生1名の受入れが可能です。仮に自社に100名の常勤職員がいる場合には、5名の研修生を受入れることができるのです。
しかし、後者の団体管理型の受入れを選択した場合には要件が緩和され、常勤の職員50人以下であれば3人まで、51人以上100人以下であれば6人までの研修生を受入れることが可能となります。つまり、常勤従業員が20名以下の企業であっても3人までは受入れることが可能となるのです。ただし、一般的には常勤の職員数よりも多い人数は受入れることはできず、仮に常勤職員が2名であれば受入れ可能な研修生は2名までということになります。
このような基準があるため、一般的に多くの常勤職員を抱える大企業であれば企業単独で受入れることが多くなり、常勤職員数が少ない小規模の会社であれば中小企業事業協同組合などを通して団体管理型の受入れを行うケースが多いようです。
また、ここに記載した方法以外にもAOTS(財団法人海外技術者研修協会)などの団体を利用する方法など様々な受入れ方法がありますので、自社にあった方法を選ぶことが重要です。
このように送出し機関と受入れ機関が決定したら、詳細な資料を添付して管轄する入国管理局に書類を提出し、「研修」の在留資格認定証明書取得申請を行なうことになります。
外国人研修生を受入れるには様々な条件をクリアさせなければなりません。ただし、外国人研修制度には実務研修を伴うものと伴わないもの、それに、企業が独自で受入れる場合、中小企業団体などを通して受入れる場合など、多くの受入れパターンが考えられます。当然、それぞれの受入れパターンにより上陸許可基準、必要書類などが異なりますので、最初にどのような方法で受入れるのかを決定する必要があります。以下に掲げた上陸のための審査基準は「実務研修を伴う研修で、受入れ機関が企業の場合」です。
①研修生本人に関する条件
1)申請人が修得しようとする技術・技能・知識が同一作業の反復のみによって修得できるものでないこと。
単純作業や簡単な知識で時間をかけて研修する必要がないものは除かれます。
2)申請人が18歳以上であり、かつ、国籍又は住所を有する国に帰国後日本において修得した技術・技能・知識を要する業務に従事することが予定されていること。
研修生は日本での研修終了後には本国に戻り、研修で培った技術や技能を生かす仕事に復職することが条件となっています。そのため、「復職予定証明書」などの提出が必要となる場合があります。
3)申請人が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技術・技能・知識を修得すること。
4) 研修生が入管法5条のいずれにも該当しないこと。
入管法5条には、日本への上陸拒否の条件が列挙されています。具体的には麻薬などの薬物所持者、1年以上の懲役をうけた者などで、通常は外国人研修生が該当することは考えにくいものですが、それぞれに細かく規定されているので、必ず目を通すようにしてください。
5)研修生が有効な旅券の発行を受けていること。
研修生に本国において既にパスポートが発行されていることが必要です。
②受入れ機関に関する条件
1)研修生が受入れようとする研修が、その研修生を受入れる日本の受入れ機関の常勤の職員で習得しようとする技術・技能・知識について5年以上の経験を有する者の指導で行われること。
専門家による実質的な研修内容が求められ、その場限りの場当たり的な研修内容では許可されません。
2)研修生用の宿泊施設を確保していること。
通常は空いている社宅を利用したり、研修生のためにアパートを1棟借り上げる場合もありますが、研修場所との距離、部屋の広さ、間取りなどについても指導を受ける場合があります。契約を結ぶ前に入国管理局などで確認をしたほうが良いでしょう。
3)研修生用の研修施設を確保していること。
自社の施設を利用して構いません。非実務研修(座学)用に会議室やミーティングルーム、実務研修用に工場や作業場などを確保する必要があります。
4)申請人を含めた受入れ機関に受入れられている研修生の人数がその機関の常勤の職員の総数の20分の1以内であること。
常勤職員にはパートタイマーや下請機関からの出向職員は含まれません。また、研修期間全体を通して20分の1以下とならなければなりません。
5)外国人研修生の生活の指導を担当する職員が置かれていること。
6)申請人が研修中に死亡し、負傷し、または疾病に罹患した場合における保険への加入その他の保障措置を講じていること。
(財)国際研修協力機構が取り扱い窓口となる「外国人研修生総合保険」などに加入する必要があります。
7)研修施設について労働安全衛生法の規定する安全衛生上必要な措置に準じた措置を講じていること。
8)申請人が日本において受けようとする研修の中に実務研修が含まれている場合は、その実務研修を受ける時間が日本において研修を受ける時間全体の3分の2以下であること。
実務研修が大部分を占めるような研修計画では許可はされません。必ず研修全体の3分の2以下にする必要があります。
9)受入れ機関又はその経営者、管理者、申請人の受ける研修について申請人を指導する者もしくは生活指導員が過去3年間に外国人の研修に係る不正行為を行ったことがないこと。
10)申請人が受けようとする研修の実施について日本の国または地方公共団体の機関以外の機関があっせんを行う場合は、営利を目的とするものではなく、かつ、その機関またはその経営者もしくは常勤の職員が過去3年間に外国人の研修に係る不正行為を行ったことがないこと。
③研修生送出し機関に関する条件
研修生が次の1から3のいずれかに該当すること。
1)研修生が送り出し国の国または地方公共団体あるいはこれらに準ずる機関の常勤の職員であり、かつ、その機関から派遣されるものであること。
2)受入れ機関の合弁企業または現地法人の常勤の職員であり、かつ、その合弁企業、現地法人から派遣されるものであること。
3)受入れ機関と引き続き1年以上の取引の実績又は過去1年間に10億円以上の実績を有する機関の常勤の職員であり、かつ、これらの機関から派遣されるものであること。
外国人研修生を受入れる際に最も気をつけなければならないのが、研修制度は単純労働力の受入れ対策ではないということです。当然、研修生は労働者ではなく、賃金の支払い、賞与、残業代などの支払、それに雇用保険などへの加入が発生することはありえません。そのため、研修生には毎月の日本での生活費として数万円程度の「研修手当て」が支給され、「外国人研修生総合保険」などに加入することになります。仮に「この研修生はよく働くから…」といった理由で賃金や賞与などを与えると不法就労とみなされ、研修生は退去強制の対象となり、受入れ機関は不法就労助長罪などに問われる可能性もあります。
また、研修制度における多くの不正行為は単純労働力を確保するために行われます。具体的には、実務研修のみを行うなどの入国管理局に提出した研修計画とは違う内容の研修を行ったり、自社で受入れた外国人研修生を労働力として他社に派遣するケースがよくあります。さらに悪質になると、毎月の滞在費として研修生に支払う「研修手当て」から受入れ企業が利益を抜いてその残りを研修生に手渡していた例もあります。
また、現地で外国人研修生を募集する際に「日本で働くことができ、今の賃金の何倍ももらえる。」といった誤った情報の元に研修生を募集すると、いざ日本に来たときに他の一般的な外国人労働者との格差に気が付き、研修施設から逃げ出してしまうケースがあります。当然、その後は不法残留者となり送り出し機関、受入れ機関ともにその責任を追及されることも考えられます。そのため、現地での募集を行う際には外国人研修制度の趣旨をきちんと説明し理解してもらう必要があります。
外国人研修生の受入を成功させるには、入管法令、労働法令、国の保険法令等を守り、研修生・技能実習生の権利をきちんと保障することが重要です。万一、受入れ機関が、本制度に係る基準やルールを守らない場合には、研修・技能実習の受入れが取り消されたり、新規の受入れができなくなることも考えられます。
研修生・技能実習生に関する不正行為について法務省が公表した「研修生及び技能実習生の入国・在留に関する指針」には次のように記載されています。
| 研修・技能実習は全般的に適正に実施されていますが,制度の趣旨を十分に理解せず,研修生に所定時間外の活動や休日に作業をさせたり,日本語教育等所要の非実務研修を計画のとおり実施しないといった不適切な事例も見られます。
入国管理局では,このような研修・技能実習に関する不適正な取扱いを「不正行為」等として次のように類型化し,該当機関に対しては研修生の受入れ停止等の措置を執ることとしています。 「不正行為」の具体的内容 ・二重契約 ・研修・技能実習計画との齟齬 ・名義貸し ・虚偽文書の作成・行使 ・研修生の就労活動 ・研修手当の不払い・人権侵害 ・監理の懈怠 ・違法な形態による外国人の雇用 ・その他
・帰国指導 ・新規研修生の受入れ停止 ・改善措置の提出 「不正行為に準ずる行為」に認定された場合は,受入れ機関に対し改善策の提出を求め,適正な研修及び技能実習の実施が可能であると判断されるまで,研修生及び技能実習生の受入れを認めない措置をとることとしています。 1 研修事業主体とは,法務省の告示により要件の緩和を受けて研修の受入れの事業を行う中小企業団体などをいいます。 2 第二次受入機関とは,研修事業主体の下で,研修を実施する企業などをいいます。不正行為等の類型 入国管理局では,研修・技能実習に係る不正な行為を行った受入れ機関に対して,その行為が悪質と認められた場合には「不正行為」と認定し,悪質とまでは認められず今後の改善が見込まれる場合には「不正行為に準ずる行為」と認定しています。 「不正行為」と認定された受入れ機関は,「研修」の在留資格に係る基準省令第8号に基づき,認定後3年間,研修生を受け入れることができません(技能実習告示第一の3の五にも,同様の規定があります。)。 また,「不正行為に準ずる行為」と認定された受入れ機関は,改善策を提出し,適正な研修・技能実習の実施が可能と判断されるまで,研修生・技能実習生の受入れを認めない措置をとることとしています。 (1)不正行為 ■ 第1類型①(二重契約) ■ 第1類型②(研修・技能実習計画との齟齬) ■ 第1類型③(名義貸し) ■ 第1類型④(虚偽文書の作成・行使) ■ 第2類型(研修生の所定時間外活動等) ■ 第3類型(研修手当の不払い等・人権侵害行為) ■ 第4類型(問題事例の未報告・監理の懈怠等,刑事事件に発展した問題事例等) ■ 第5類型(違法な形態による外国人の雇用) ■ 第6類型(不正行為に準ずる行為の再発生) (2)不正行為に準ずる行為 ■ 第1類型 ■ 第2類型 ■ 第3類型 ■ 第5類型 ■ 「不正行為」認定機関数(年別)
※1 企業単独型受入れ機関とは,「研修」の在留資格に係る基準省令第6号イ,ロ及びハの規定により受入れを行う企業などをいいます。 ○ 第一次(団体管理型) ○ 第二次(団体監理型) ■ 「不正行為」認定の類型別比較 ○ 第一次(団体監理型) 第一次に適用した「不正行為」の類型を見ると,全56機関のうち,「第1類型④(虚偽文書の作成・行使)」が51機関(91.1%)と最も多く,以下,「第1類型②(研修・実習計画との齟齬)」が33機関,「第1類型③(名義貸し)」が15機関などとなっている。 ○ 第二次(団体監理型) 第二次に適用した「不正行為」の類型を見ると,全414機関のうち,「第1類型③(名義貸し)」が218機関(52.7%)と最も多く,以下,「第2類型(所定時間外活動)」が175機関,「第1類型②(研修・実習計画との齟齬)」が106機関,「第5類型(不法就労者の雇用等)」が60機関と続くが,「企業単独型」と異なり,「名義貸し」が最も多くなっている。
※ 一つの受入れ機関が,複数の類型をもって不正行為認定される場合があるため,認定数と不正行為認定機関数は一致しない。※ 網掛け部分は,各受入れ機関において最も多く認定されている類型である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||